アサインと採算は、分けていい。つなげないのが命取りだ

決算は締まった。ある案件が、ほとんど利益を残さずに終わっている。担当者を集めた振り返りの会議で、経営者が問う。「なぜこの案件が、こんな数字になったんだ」。

営業が答える。「提示できる単価で、獲れと言われた案件を獲りました」。現場のPMが答える。「渡された予算で、動けるメンバーで体制を組みました」。管理が言う。「上がってきた工数を、正しく締めただけです」。

誰も嘘をついていない。三人とも、自分の持ち場の仕事を正確にこなしている。それでも案件は赤字になった。間違っていたのは誰でもない。三つの正しい仕事を、最後まで一度もつなげなかったことのほうだ。

プロジェクト型組織のほとんどが、当然のように信じている。アサイン(誰をどの案件に置くか)は現場の仕事、採算(その編成でいくら残るか)は経営の仕事。役割を分けるのは正しい。専門が違うのだから、分けて当然だ。間違いはその次にある。分けたあと、二つの仕事をそれぞれの担当に任せきりにして、つなぐ場所を誰も用意しない。利益は、その分断の継ぎ目からこぼれ落ちる。

配置を動かした瞬間、採算は決まっている

「この案件に、誰を、いくらの単価で、何人入れるか」。この一つの決定が、二つの顔を持っている。人を動かすという顔(アサイン)と、利益を決めるという顔(採算)だ。同じ事柄を、見る角度で呼び分けているにすぎない。Aさんをこの案件に入れた瞬間、Aさんの原価とスキルと稼働が、その案件の限界利益をその場で確定させる。配置は採算そのものだ。

組織は、この一つの事柄を二つの役割に持たせる。配置を組み立てる人(アサインプランナー)と、採算に責任を持つ人(事業責任者)だ。これ自体は理にかなっている。専門が違うのだから、別の人が受け持っていい。

問題は、二つの役割が別々の部屋に座ったきり、つながらないことだ。アサインプランナーが見るのは今週の稼働、事業責任者が見るのは締まった損益。同じ一つの事柄を、別の画面で、別の時間軸で、互いを見ないまま握っている。配置がそのまま利益を決めるこの一点を、二人が半分ずつ握ったまま、一度も突き合わせていない。

継ぎ目から、利益はこう漏れていく

この継ぎ目は、決まって三つの場所から利益を漏らす。

  1. アサインを決める手元に、損益が映っていない。 現場が見られるのは「誰の工数が空いているか」だけだ。だから配置は、空いたコマを埋めるパズルに化ける。来月Aさんが半分空くから、この案件へ。その一手で限界利益がいくら動いたかは、現場の画面のどこにも出ない。利益の話は、ずっと先の経営会議まで誰もしない。

  2. 損益が見えた頃には、アサインはもう固まっている。 経営が数字を手にするのは、案件が走り出し、原価が積み上がったあとだ。そこで「単価に対して体制が重すぎる」と気づいても、もう動かせない。見切り発車のどんぶり勘定を、後ろから集計するしかない。経営に残されるのは、出てしまった赤字を正しく締める仕事だけになる。

  3. 案件をまたいだ負荷を、誰も合算しない。 現場のPMは自分の案件しか見ない。経営は案件単位の損益しか見ない。すると、複数の案件に少しずつ入っているエースの総稼働が、どの席からも見えなくなる。継ぎ目に落ちたエースは静かに過負荷になり、ある日辞める。その採用と育成のやり直しは、どの案件の損益にも計上されないまま、会社全体の体力を削っていく。

三つとも、能力や努力の問題ではない。配置を決める人と、採算に責任を持つ人が、別々だから起きるのではない。別々のまま、一度もつながらないから起きる。役割を分けるのはいい。二つの席が同じ画面を見ないから、利益は二人のあいだに落ちる。

別々の二人を、同じ画面に座らせる

打ち手は、二つの役割を一人に束ねることではない。管理ツールをもう一つ増やすことでもない。別々のままでいい二人を、同じ画面の前に座らせ、その場で合意形成できる状態をつくることだ。

AI採算設計クラウド『CATCAREERアサインメント』は、このために作られている(特許出願済)。立つ場所は、案件がまだ受注されていない提案・営業フェーズだ。アサインプランナーが「誰をどの単価でどの案件に組むか」を動かすと、その編成の限界利益がその場で変わる。事業責任者は、できあがった赤字をあとから見るのではなく、利益が決まるその瞬間に、同じ画面で配置と採算を一緒に見て頷ける。

これは受注後の人員パズルではない。事後の損益集計でもない。その二つの「手前」で、配置を組む人と採算を持つ人が、同じ画面の上で合意する行為だ。空きを埋める道具も、終わった原価を締める道具も、それぞれ別に要る。だが「配置がそのまま利益を決める」一点だけは、二人が別々の会議で握ったまま取りこぼさない。

この「配置=採算」を一つの画面に乗せる思想は、コスト管理型か、利益創出型かで書いたコストと利益の分かれ目とも、「予実管理の手前」で勝負は決まるで書いた設計フェーズの話とも地続きだ。配置を多変量で解くエンジンの中身は案件アサイン管理とはで開いた。

役割を分けるのは正しい。間違いは、分けた二人を別々の会議に置き去りにし、その継ぎ目を放っておくことだ。配置を組むアサインプランナーと、採算に責任を持つ事業責任者は、最後まで別々の専門家でいい。ただ、決める瞬間だけは同じ画面にいなければならない。二人を一人にする必要はない。同じ画面に座らせて、合意させればいい。

FAQ

アサインと採算は、役割を分けてはいけないのですか?

分けて構いません。アサインプランナーと事業責任者が別々に担うのは自然です。問題は分業ではなく、二つの判断が連携しないことです。アサインを決める場に損益が映らず、損益を見る場ではもうアサインを動かせない。この分断のせいで、利益が決まる瞬間に両方を見て合意する人がいなくなります。

アサインと採算は具体的にどこで分断されていますか?

多くの組織で、アサインは現場・PMの資源会議で、採算は経営・管理部の予実会議で、別の人が別の時間軸で決めています。アサインを決める場に損益が映らず、損益を見る場にはアサインを動かす自由度が残っていないため、ひとつの判断が二つの部屋に割れています。

分断をなくすにはどうすればよいですか?

アサインを動かすたびに限界利益がその場で変わる、ひとつの画面で両方を見ながら決めることです。受注前の提案フェーズで編成と採算を一緒に設計すれば、利益が決まる瞬間に両方が見えています。CATCAREERアサインメントは、アサインプランナーと事業責任者がこの一つの画面で合意形成できるように作られています。

アサイン(配置)と採算は同じものだとはどういう意味ですか?

「誰を、いくらの単価で、何人入れるか」という一つの決定が、人を動かすアサインと利益を決める採算という二つの顔を持つからです。あるメンバーを案件に入れた瞬間、その人の原価・スキル・稼働がその案件の限界利益をその場で確定させます。配置を動かした時点で、採算はもう決まっています。

アサインと採算の分断を放置すると何が起きますか?

配置を決める手元に損益が映らず、損益が見えた頃にはアサインが固まっているため、赤字化しても誰の責任にもなりません。さらに複数案件に少しずつ入るエースの総稼働がどの席からも見えず、過負荷の末に離職します。その採用・育成のやり直しは、どの案件の損益にも計上されないまま会社の体力を削ります。