PMOが炎上を止められないのは、無能だからではない

火曜の定例会議。PMOの佐藤が配った進捗レポートは、3つの案件が黄信号で点滅している。原価が予算を食い始めた、納期に赤が出た、要員が足りない。事実は正確だ。だが会議室の誰も、佐藤の方を見ない。

レポートが映しているのは、もう起きてしまったことだ。原価は超過した。納期は遅れた。佐藤にできるのは、それを色分けして報告することだけだ。火種を引いたのは半年前の提案フェーズで、その場に佐藤はいなかった。

現場のPMは、会議が終わると佐藤のSlackをミュートにする。「現場を知らない人間に、数字で詰められたくない」。この一言に、PMOという職種の構造的な敗北が詰まっている。

進捗管理は、終わった勝負の実況中継だ

PMOを置けば炎上は防げる。多くの経営がそう信じて専任のPMOを立てる。そして数年後、そのPMOは稼働集計と火消しの調整に追われる「管理の番人」になっている。なぜか。

進捗管理は、定義上、すべてが手遅れになってから始まる作業だからだ。 進捗とは走り出した案件の現在地であり、現在地が見えるのは走り出した後でしかない。原価が予算を超えてからでないと、超過は数字に出ない。進捗レポートが赤を表示した瞬間、その赤はもう確定している。

管理は、負けを記録する。記録をどれだけ精緻にしても、負けが勝ちに変わることはない。

PMOがスベるのは、人柄ではなく立つ場所だ

ではなぜPMOは、もっと上流に踏み込まないのか。提案や編成の段階で「この体制では赤字になる」と言えばいい。言えないのだ。構造的に。理由は3つある。

1. 現場のリアルを持たない。 多くのPMOは泥臭い現場を最前線で潜り抜けた人間ではなく、「PMO」という専任職種としてアサインされる。だからメンバー個々の本当のスキル感も、誰と誰を組ませると噛み合うかも、肌で分からない。編成に口を出すには数字の外にある現場の解像度がいる。それを持たないPMOが触れるのは、誰が見ても同じ「進捗の数字」だけになる。

2. 編成が決まる場に、呼ばれない。 提案・受注・アサインは、営業と事業責任者が走りながら決める。誰を、どの単価で、何人。この最上流の意思決定に、PMOの席はない。気づいたときには編成表は固まり、案件は走り出している。残された仕事は、固まった編成が生む結果を集計することだけだ。

3. 事後の数字は、誰にでも触れる。 走り出した後の進捗は、現場を知らなくても集計できる。スキルの相性も人間関係も要らない。現場のリアルを持たないPMOにとって、唯一安全に立てる場所が「事後管理」なのだ。だから逃げ込む。そして現場から「数字を取り立てるだけの人」と見なされる。

3つは同じ一点に行き着く。PMOは、勝敗が決まる場所に立てないから、決着した結果を集計する場所に追いやられている。

勝敗は、編成表が固まる前に決まっている

プロジェクトの利益は、走り出す前の提案・受注・編成でほぼ決まる。どんぶり勘定の受注と、スキルシートだけ見た表面的なアサインが、半年後の炎上を仕込む。炎上してから投入される火消しのPMOは、最初から負けている勝負の後始末をしているにすぎない。

PMOが取り戻すべきは、この「走り出す前」だ。そのために要るのは根性でも現場経験の年数でもない。現場のリアルと、利益のシミュレーションを、編成を決めるその場で同時に握れる仕組みだ。

ここが CATCAREERアサインメント の立つ場所になる。提案フェーズで、この体制で組んだら限界利益がいくら出るかをその場で試算する。原価・稼働・スキル・本人の意向・限界利益を同一画面に置き、アサインを動かすと採算がどう変わるかを走り出す前に見せる。現場を肌で知らないPMOでも、データという根拠を握って「この編成は赤字になる」と言えるようになる。AIは現場の代わりに決めるのではなく、現場の本音と稼働を可視化して、PMOに欠けていた解像度を補う。

立つ場所事後管理のPMO事前設計のPMO
介入する時点走り出した後編成が固まる前
触れるもの確定した進捗・実績これから動く限界利益
武器過去の集計採算シミュレーションと現場の可視化
生む価値赤字幅の記録黒字の設計

進捗を色分けして配るPMOは、現場に嫌われる。編成が固まる前に「この単価では負ける」と言えるPMOは、現場に頼られる。両者を分けるのは人柄ではない。介入できるタイミングだ。

管理は、終わった結果を集計する。設計は、勝てる勝負を選ぶ。 PMOの仕事は、前者から後者へ移る時が来ている。

FAQ

PMOを置けばプロジェクトの炎上は防げますか?

進捗管理だけでは防げません。進捗は走り出した後の現在地しか映さず、レポートが赤を示した時点でその赤字は確定しています。炎上の多くは提案・受注・編成という走り出す前のフェーズで仕込まれます。PMOがその上流の意思決定に介入できなければ、炎上の後始末を担うだけになります。

なぜPMOは現場から嫌われ、事後管理に終始してしまうのですか?

人柄ではなく構造の問題です。多くのPMOは現場の泥臭い実態やメンバーのスキル感を肌で持たず、編成を決める最上流の場にも呼ばれません。結果、現場のリアルを必要としない事後の進捗集計だけが安全に立てる場所になり、事後管理へ逃げ込みます。

PMOが事前設計に立つには何が必要ですか?

現場のリアルと利益のシミュレーションを、編成を決めるその場で同時に握る仕組みです。提案フェーズで体制ごとの限界利益を試算し、原価・稼働・スキル・意向・利益を同一画面で見てアサインを動かしながら採算を確かめます。これにより現場経験の浅いPMOでもデータを根拠に編成へ介入できます。

進捗管理と事前の採算設計は何が違いますか?

進捗管理は走り出した案件の現在地を集計する事後の作業で、レポートが赤を示した時点でその赤字は確定しています。事前の採算設計は、編成が固まる前に体制ごとの限界利益を試算し、勝てる勝負を選ぶ営みです。管理は終わった結果を記録し、設計は黒字を作ります。

PMOを事後の進捗管理に留めると何が起きますか?

炎上の後始末係になり、現場から「数字で詰めるだけの人」と敬遠されます。勝敗は提案・受注・編成という上流で決まるのに、PMOがそこに介入できなければ、最初から負けている勝負の集計を繰り返すだけです。生む価値は赤字幅の記録に留まり、黒字の設計には関与できません。