リテンションマネジメントとは。離職を利益で捉える視点

リテンションマネジメントを、福利厚生や働きやすさの話だと捉えている限り、エースの離職は止まらない。プロジェクト型組織では、離職は利益問題だ。 一人のエースが抜けることは、採用コスト以上に、その人が回していた案件の利益を直接削る。

この記事の要点

  • リテンションマネジメントとは、人材の定着を経営課題として設計する取り組みである。
  • プロジェクト型組織では、エースの離職は採用コストでなく案件の限界利益毀損が最大のコストになる。
  • 離職率は遅行指標で、見えた時には手遅れ。消耗の予兆を先行指標で捉える。
  • 打ち手は制度や研修でなく、本人の関わる案件の配置変更にある。
  • 離職を利益で捉え、配置で防ぐのが採算設計の視点だ。

リテンションマネジメントとは何か

リテンションマネジメントとは、人材の定着を福利厚生ではなく経営課題として設計する取り組みである。 離職した後に補充を急ぐのではなく、離職に向かう予兆を先に捉え、本人の働く中身を変えて引き留める。

注目されるのは、人材獲得が難しくなり、一人の離職が事業に与える打撃が大きくなったからだ。とりわけプロジェクト型組織では、人がそのまま事業の生産能力であり、エースの離脱は進行中の案件を直撃する。だからこの業態のリテンションは、人事の課題である前に、利益の課題になる。

エース離職の本当のコスト

エースが辞めたときのコストを、採用費だけで見積もると実態を外す。コストは3層にある。

コストの層中身見えやすさ
採用・引き継ぎ後任の採用費、立ち上がりまでの工数、引き継ぎの負荷見えやすい
進行案件の限界利益毀損担当案件の品質・進行が傾き、当初の限界利益が削れる見えにくい
連鎖離職残ったメンバーへ負荷が集中し、次の離職を誘発する最も見えにくい

採用費は請求書に出るから誰でも気づく。だがプロジェクト型で最も大きいのは、二層目の進行案件の限界利益毀損だ。エースが抜けた案件は、リカバリーに高原価の人材を投入することになり、当初設計していた利益が溶ける。炎上していなくても利益だけが消える構造は炎上ゼロでも利益は消える。「隠れ失敗プロジェクト」の正体に書いた。エースの離職は、この隠れ失敗を一気に顕在化させる引き金になる。

離職を防ぐのは、制度ではなく配置

離職を利益問題として捉えると、打ち手も変わる。福利厚生の拡充や全社研修は、平均への施策で、いま特定の案件で消耗しているエースには届かない。効くのは、本人が関わる案件そのものを変えることだ。

そのためには予兆を早く拾う必要がある。離職率は結果が出てからの遅行指標で、見えた時には本人はもう決めている。過負荷の蓄積、学びにならない作業の繰り返し、意向と合わない配置——これらの先行指標は、サーベイより案件の状態に早く表れる。優秀な人ほど不満を口にする前に動くため、予兆の捉え方は優秀な人材が突然辞める本当の理由と離職予兆の捉え方に譲る。

予兆を捉えたら、消耗の原因になっている案件から組み替える。ただし一人を動かせば、抜けた穴と移った先の採算が同時に動く。本人の納得と利益が両立する配置を選ばなければ続かない。採算設計とは、本人の定着と案件の利益が両立する配置を、走り出す前に設計する考え方である。 手法はアサインメントデザイン™、実装した採算設計クラウドがCATCAREERアサインメントだ。本人の意向と案件の限界利益を同じ画面に置き、使い潰しを防ぎながら利益も守る配置を組む。

打ち手がなぜサーベイでなくアサインなのかは離職対策はサーベイではなく、良いアサインだに整理した。リテンションマネジメントは、定着率を追う活動ではない。エースが消耗する前に配置を変え、利益を守る経営判断だ。

FAQ

リテンションマネジメントとは何ですか?

リテンションマネジメントとは、人材の定着を福利厚生ではなく経営課題として設計する取り組みです。特にプロジェクト型組織では、離職を利益損失として捉え、案件配置の設計で防ぎます。離職率を事後に集計するのではなく、消耗の予兆を先行指標で捉えて手を打つのが要点です。

エース社員の離職はなぜ利益問題なのですか?

採用や引き継ぎのコストに加えて、進行中の案件の限界利益を直接毀損するからです。エースが抜けると担当案件が傾き、残ったメンバーへ負荷が集中して連鎖離職を招きます。プロジェクト型では、この案件の利益毀損が最も大きく、最も見落とされるコストです。

リテンションマネジメントで何を指標にすべきですか?

事後の離職率だけでなく、誰がどの案件で消耗しているかを示す先行指標です。具体的には過負荷の蓄積、学びにならない作業の繰り返し、本人の意向と合わない配置です。離職率は結果が出てからの遅行指標で、見えた時には手遅れになりがちです。

福利厚生やエンゲージメント施策では離職を防げないのですか?

全社施策は平均への打ち手のため、特定の案件で消耗している個人には届きにくいからです。制度や研修を整えても、本人が関わる案件が変わらなければ消耗は止まりません。打ち手の中心は、本人の関わる案件の配置変更にあります。

リテンションマネジメントはどの部門が担うべきですか?

測定や制度は人事が、配置の変更は経営・事業責任者やPMが担う分担が現実的です。離職を利益問題として扱うなら、案件配置と採算を動かせる経営側が中心になります。測る側と動かす側を分け、予兆を配置の権限を持つ側へ渡すことが要点です。

本記事の引用・転載を歓迎します。出典として本ページへのURLリンクを必ず明記してください。