経営・採算管理
実績管理は利益を生まない。その入力に説明責任はあるか
プロジェクト型ビジネスには、誰も疑わない前提がある。「精緻に管理すれば、利益は上がる」という前提だ。
数々のプロジェクト型ERPやPSA(プロフェッショナルサービスオートメーション)がこの前提の上に建てられてきた。起きた事実をいかに漏れなく集めるか。その一点に各社が機能を競う。だが残酷な事実を言う。どれだけ正確に過去を記録しても、それは赤字の言い訳を精緻にするだけで、利益を1円も生まない。
この記事の要点
- 実績の工数管理は説明責任のための記録であり、それ自体は利益を生まない。
- 精緻な工数入力が必要なのは、厳格なT&M契約や公的監査など外部への証明義務がある企業だけだ。
- 義務がないのに15分単位の入力を現場へ強いる事後管理は、純粋な運用負荷でしかない。
- 利益が決まるのは受注前のアサイン設計の一瞬で、事後の記録はその結果を後追いするだけだ。
- 採算設計とは、過去の実績ではなく未来の稼働割合を受注前に設計し、目標粗利を確定させる行為である。
その工数入力は、誰のためのものか
経営層が直視すべき問いがある。「我々に、そこまでの説明責任(アカウンタビリティ)は必要なのか」という問いだ。
精緻な実績管理が本当に意味を持つ場面は限られている。稼働時間で清算する厳格なタイム・アンド・マテリアル契約。公的な監査。外部に対して「この人は確かにこの案件に何時間使った」と証明する義務がある企業だ。この義務がある限り、15分単位の記録は経営上の必然になる。
問題は、その義務を負っていない大多数の請負・プロジェクト型企業まで、同じ事後管理を当然のものとして導入していることだ。証明する相手がいないのに、現場は毎日タイムシートを埋める。集まったデータは、誰の意思決定にも使われない。説明責任のための記録は、説明責任が無ければ純粋なムダになる。
金曜の夕方。現場のエンジニアが、一週間前の自分の記憶をたどりながら工数表のセルを埋めている。月曜の午前は何の打ち合わせだったか。あの障害対応は2時間か3時間か。思い出せないまま、それらしい数字を置く。その曖昧な数字が集計され、来月の経営会議で「原価が予算を超過しました」と報告される。誰も得をしていない。
過去の時間を捨てる。未来の「%」だけを握る
CATCAREERアサインメントは、ここで他社と逆を行く。あえて実績の工数管理をしない。
これは機能の欠落ではない。「採算設計」という別のカテゴリに立つための、明確な意思表示だ。実績入力という巨大な運用負荷を捨て、求めるのはただ一つ、設計フェーズで「誰が、どの案件に、何割動くか」という稼働割合だけだ。
プロジェクトの利益率は、受注前のパズルを解いた瞬間にほぼ決着している。
- 従来型の発想: Aさんは先週X案件に40時間、Y案件に10時間使った。事実の確認だ。
- 採算設計の発想: 来月、Aさんのリソースの6割をX案件、4割をY案件に当てれば、全体で目標粗利に届く。未来の確定だ。
事実の確認は、終わってしまった結果をなぞるだけだ。未来の確定は、まだ動いていない利益を作りにいく。入力する対象を「過去の時間」から「未来の割合」へ移すだけで、現場の負荷は極小になり、マネージャーと経営の視線は「答え合わせ」から「これからどう利益を作るか」へ強制的に向き直る。
利益が決まるのが受注前の一瞬であることは「予実管理の手前」で勝負は決まるでも書いた。事後の集計をどれだけ精緻にしても、出てしまった赤字は戻らない。
事後管理と採算設計は、見ている時間が逆だ
従来型ERP / PSAとCATCAREERアサインメントは、競合ではない。見ている世界が違う。一方は過去を記録し、もう一方は未来を設計する。
| 比較項目 | 従来型ERP / PSA | CATCAREERアサインメント |
|---|---|---|
| カテゴリ | 事後管理・予実管理 | 採算設計(Profit Design) |
| コア機能 | 過去の実績(時間・コスト)の集計 | 未来の稼働割合(%)の設計 |
| 存在意義 | 説明責任(アカウンタビリティ)の担保 | アサイン最適化による利益創出 |
| 時間の向き | 過去(記録のシステム) | 未来(意思決定のシステム) |
| 現場の負担 | 毎日の精緻な工数入力 | 受注前の体制設計のみ |
| 放置すると | 入力負荷だけ増え、赤字は戻らない | ― |
採算設計とは、過去の実績を記録する行為ではない。受注前に未来の稼働割合を設計し、目標粗利を確定させる行為だ。だからCATCAREERアサインメントは、工数管理ツールを置き換えない。立っている時間軸がそもそも逆だからだ。コストを管理する道具と利益を設計する道具の違いはコスト管理型か、利益創出型かで整理した。
なお、説明責任の義務がある企業まで実績管理を捨てろという話ではない。監査やT&M清算が要るなら、記録は記録として残せばいい。言いたいのは一点だけだ。その記録を、利益を作る仕組みと取り違えるな。
記録をやめる。利益は記録の中にない
「正確な工数管理」は、いつから目的になったのか。本来は手段だったはずだ。システムに数字を入れること自体が目的化し、最も重要な「利益を設計する」思考を奪ってきた。
過去をどれだけ精緻に記録しても、そこに利益は無い。利益は、まだ書かれていない未来の側にある。説明責任という宿題がないのなら、実績管理は勇気を持って捨てていい。記録すべき過去より、設計すべき未来に時間を使おう。
FAQ
なぜ精緻な工数の実績管理をしても利益が増えないのですか?
実績の工数管理は起きた事実を記録する作業で、過去を精緻にするだけだからです。どれだけ正確に集計しても出てしまった赤字は戻りません。利益が決まるのは受注前にどの案件へ誰を何割アサインするかを決める設計の一瞬で、事後の記録はその結果を後追いするだけです。
実績の工数入力をしている本当の理由は何ですか?
多くの場合、利益のためではなく説明責任のためです。厳格なタイム・アンド・マテリアル契約や公的な監査など、外部に稼働実績を証明する義務がある企業にだけ精緻な工数記録は必要です。その義務がないのに15分・1時間単位の入力を現場へ強いるのは、利益を生まない純粋な運用負荷です。
従来型ERP・PSAとCATCAREERアサインメントは何が違いますか?
従来型ERP・PSAは過去の実績を漏れなく記録する事後管理の道具で、時間の向きは過去です。CATCAREERアサインメントは受注前に誰を何割アサインすれば目標粗利に届くかを設計する道具で、時間の向きは未来です。前者は説明責任を担保し、後者は利益を創出します。
実績の工数管理を捨てても問題ないのはどんな企業ですか?
請負契約が中心で、外部への稼働時間の証明義務や公的監査の対象でない受託・プロジェクト型企業です。これらの企業では工数の実績は誰の意思決定にも使われないことが多く、入力は利益に貢献しません。説明責任が不要なら実績管理は捨て、設計に資源を移すべきです。
実績を入力しないなら、現場は代わりに何を入力するのですか?
設計フェーズでの稼働割合だけです。来月この人のリソースの6割をX案件へ4割をY案件へ、という未来の配分を入力します。毎日の精緻な工数入力は不要になり、入力負荷は極小化されます。現場の意識も終わったことの記録から、これからの利益づくりへ移ります。