なぜプロジェクトは赤字になるのか。原因は受注時点にある

プロジェクトが赤字になる主因は、進行中の炎上ではなく、受注時点での見立ての甘さにある。体制・単価・スコープを詰めずに受注した案件は、走り出す前から赤字の構造が組み込まれている。炎上は赤字を表面化させる引き金であって、原因そのものではない。赤字の大半は、受注時点でほぼ決まっている。

赤字案件と聞くと、深夜の火消しや手戻りの連鎖を思い浮かべる。だが炎上は症状であって病ではない。同じ手戻りでも、十分な単価と編成で受けた案件なら赤字にはならない。原因をどの時点に置くかで、打てる対策はまるで変わる。赤字が生まれる過程を、受注前・進行中・事後の3層に分けて整理する。

この記事の要点

  • プロジェクト赤字の主因は進行中の炎上ではなく、受注時点での体制・単価・スコープの見立ての甘さにある。
  • 赤字は受注前・進行中・事後の3層で進む。受注前に構造が決まり、進行中に拡大し、事後に発覚する。
  • 利益がまだ動かせるのは受注前だけで、進行中の管理は悪化を遅らせ、事後の集計は結果を記録するにとどまる。
  • 炎上型赤字も隠れ赤字も源は同じ受注時点にあり、炎上の有無は赤字に気づくタイミングを変えるだけだ。
  • 対策の置き場所を事後の予実管理・火消しから受注前の採算設計へ移すと、同じ構造の赤字が繰り返されなくなる。

なぜ赤字の原因を進行中に探すと間違えるのか

赤字案件の振り返りは、たいてい進行中に向かう。なぜ工数が膨らんだのか、なぜ手戻りが起きたのか、なぜスコープが広がったのか。現場の動きを細かく辿る。だがそこで見つかるのは、赤字を深めた要因であって、赤字を生んだ原因ではない。

案件の原価構造は「誰を・何人・何カ月」という編成が決まった受注時点でほぼ確定する。その原価に対して単価が低ければ、進行が完璧でも利益は残らない。逆に単価と編成が見合っていれば、多少の手戻りは吸収できる。赤字か黒字かの分岐は、案件が走り出す前、受注を判断する一瞬で大半が決まっている。

進行中に原因を探すと、対策は進捗管理の強化や火消しの早期化に向かう。これは悪化の速度を抑えるが、すでに組み込まれた赤字の構造には届かない。原因を取り違えると、対策の置き場所まで取り違える。

赤字が生まれる3つの層

赤字は一度に生まれない。受注前に構造が仕込まれ、進行中に拡大し、事後に発覚する。3つの層を順に見ると、介入できる場所がどこかがはっきりする。

  1. 受注前——構造が組み込まれる層。 体制と単価の見立てが甘いまま受注すると、原価を割る単価や高グレードに偏った編成が確定する。この時点で限界利益はほぼ決まり、案件は赤字の構造を抱えて走り出す。利益をまだ動かせるのはこの層だけだ。受注前の見積に現れる兆候の見つけ方は赤字案件を可視化する方法。粗利を見るだけでは遅い理由に書いた。

  2. 進行中——赤字が拡大する層。 固まらないスコープが膨張し、想定した稼働に穴が空き、追加対応が原価を食う。ここで起きるのは赤字の発生ではなく拡大だ。受注時点の見立てが甘いほど、進行中の振れ幅は大きくなる。進行中の予算超過を未然に削る視点は予算超過を事前検知する方法。案件解像度と体制設計の重要性で整理した。

  3. 事後——赤字が発覚する層。 案件別の損益を集計して、初めて赤字だったと分かる。だが集計が出るのは案件が終わったあとで、損失はすでに発生済みだ。月次の利益率では複数案件と固定費が混ざり、どの案件が赤字かも見えにくい。発覚は記録であって対策ではない。

3層を貫く事実は一つだ。利益が動かせるのは受注前の第1層に限られ、第2層と第3層では構造をなぞるか記録するしかない。原因が第1層にあるなら、対策も第1層に置くのが理屈に合う。

炎上していないのに赤字なのはなぜか

赤字には2つの見え方がある。誰の目にも分かる炎上型の赤字と、静かに完了する隠れ赤字だ。この2つを並べると、炎上の有無が原因の所在とは無関係だと分かる。

比較項目炎上型赤字隠れ赤字
発生の見え方納期遅延・手戻り・火消しで顕在化する納期どおり静かに完了する
原因の所在受注時点の見立ての甘さ(進行は引き金)受注時点の見立ての甘さ
気づくタイミング進行中に異常として表面化する事後の損益集計まで気づかれない
打てる手火消しで損失を抑える(構造は変わらない)受注前の設計でしか止められない

表の2行目を見れば線は一本だ。炎上型赤字も隠れ赤字も、原因の所在は同じ受注時点にある。 違うのは気づくタイミングだけで、炎上は赤字を早く表面化させ、隠れ赤字は決算まで隠す。むしろ炎上しない赤字のほうが、失敗と呼ばれないまま繰り返される分だけ厄介だ。炎上なき赤字の正体は炎上ゼロでも利益は消える。「隠れ失敗プロジェクト」の正体で深掘りした。

炎上を止めれば赤字が消えると考えると、火消しの精度を上げる方向に労力が向かう。だが火消しは損失を抑えても構造は変えない。炎上を起こさず静かに赤字を完了させる案件は、火消しの対象にすらならない。

原因が受注時点にあるなら、対策も受注前に置く

赤字の大半が受注時点で決まるなら、論理の帰結は一つだ。対策を事後の予実管理や進行中の火消しから、受注前へ移すしかない。発生してから記録する仕事を強化しても、発生する前に決まる構造には届かないからだ。

受注前に体制と限界利益を設計する営みを、CATCAREERは採算設計と呼ぶ。

採算設計とは、プロジェクト型組織が案件ごとの利益を受注前に設計する考え方である。事後に集計するのではなく、提案・受注フェーズで「どの案件を、いくらで、誰を組んで受けるか」を意思決定の対象として可視化し、走り出す前に利益の見通しを確定させる。これを実現する手法がアサインメントデザイン™で、受注前に体制と限界利益を設計する営みを指す。カテゴリの全体像と他の管理系との違いは採算設計とは。プロジェクト型組織が受注前に利益を作る新カテゴリにまとめた。

赤字の3層のうち、進行中の管理と事後の集計を担う道具は十分にある。空白だったのは、利益がまだ動かせる受注前の層だ。ここに設計を置けば、赤字は「気づいたら発生していた結果」から「受注前に弾いた編成案」へ姿を変える。

赤字対策は、赤字を正確に記録することではない。

受注前に赤字の構造を消すことだ。

FAQ

プロジェクトが赤字になる原因は何ですか?

プロジェクトが赤字になる主因は、進行中の炎上ではなく受注時点での体制・単価・スコープの見立ての甘さです。誰を何人何カ月当てるかという編成が決まった瞬間に原価構造はほぼ確定し、その原価に単価が見合わなければ、現場がどれだけ努力しても赤字は回復しません。炎上は赤字を表面化させる引き金で、原因そのものではありません。

なぜ炎上していない案件まで赤字になるのですか?

赤字の構造は炎上の有無と無関係に受注時点で組み込まれるからです。安すぎる単価や高グレードに偏った編成で受けた案件は、納期どおり静かに完了しても利益が残りません。炎上は赤字を目立たせるだけで、炎上しない案件はむしろ赤字が見過ごされ、決算の営業利益率という一つの数字に溶けて気づかれにくくなります。

プロジェクトの採算悪化はどの段階で防げますか?

最も効くのは、受注を判断する前の段階です。採算悪化は受注前・進行中・事後の3層で進みますが、利益がまだ動かせるのは受注前だけです。進行中の管理は悪化の速度を抑え、事後の集計は結果を記録するにとどまります。介入の価値は精度ではなく、まだ単価と体制を動かせる余地で決まります。

進行中の管理を強化すれば赤字は防げますか?

防げません。進行中の管理が扱えるのは、すでに決まった原価構造の範囲内での進捗とスコープの統制です。受注時点で単価が原価を割っていれば、進捗をどれだけ精緻に管理しても黒字には戻りません。管理は赤字の拡大を遅らせますが、赤字そのものは受注前の設計でしか消せません。

赤字対策を事後の予実管理に置くと何が起きますか?

赤字だったという結果を正確に記録できますが、損失はすでに発生済みで回収できません。事後の予実管理や火消しは原因の所在である受注前に介入できないため、同じ構造の赤字が次の案件でも繰り返されます。対策の置き場所を事後から受注前へ移すまで、赤字は再生産され続けます。

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