プロジェクト事前評価とは?受注前に見るスキル・体制・採算
プロジェクト事前評価とは、受注を決める前に案件を点検し、取るべきか・どの体制で組むかを判断する行為だ。見るべき観点は、スキル適合・体制原価・限界利益・リスク・過負荷の5つ。売上額や受注確度だけで決めない。
利益が出る会社と出ない会社の差は、評価のタイミングにある。利益が出ない会社は、受注した後に「この案件は採算が合わなかった」と振り返る。利益が出る会社は、受注する前に「この案件は採算が合うか」を評価する。同じ評価でも、前に置くか後に置くかで、打てる手の量がまったく違う。
この記事の要点
- プロジェクト事前評価とは、受注前に案件を点検し受注可否と体制を決める判断行為。受注後の進捗管理ではない。
- 案件の採算は受注を決めた瞬間にほぼ確定する。評価を受注後に置くと、動かせる余地はもう残らない。
- 見るべき評価観点は、スキル適合・体制原価・限界利益・リスク・過負荷の5つ。売上額と受注確度だけでは利益は測れない。
- 5観点をそのまま使えるチェックリストにした。受注会議の前に案件ごとへ当てる。
- 事前評価を仕組みにするとは、受注前に体制と限界利益を設計すること。この設計をアサインメントデザイン™と呼ぶ。
プロジェクト事前評価とは何か
プロジェクト事前評価とは、受注を決める前に、その案件を取るべきか・取るならどう組むかを点検する判断だ。対象は、案件のスコープ・必要な体制・原価・限界利益・リスクである。
ここで言う「事前」は、提案・営業フェーズを指す。引き合いを受けてから受注可否を決めるまでの、受注前の区間だ。受注後に進捗や工数を点検する活動とは別物である。受注後の点検は、走り出した案件を見守る。事前評価は、走り出すべきかどうかを決める。
混同されやすいが、事前評価は受注確度の確認とも違う。受注確度は「顧客が買ってくれるか」を測る。事前評価は「自社が利益を残して届けられるか」を測る。商談確度と利益が別の指標である構造は商談確度は読めても、利益は読めない。パイプラインの手前で抜けている視点に書いた。
なぜ優秀な企業ほど受注後ではなく受注前に評価するのか
案件の採算は、受注を決めた瞬間にほぼ確定する。誰を入れ、何人で、どのフェーズをどう区切り、外注をどう使うか。この編成が固まった時点で、限界利益の大半は決まる。
だから評価を受注後に置くと、構造的に手遅れになる。受注後にどれだけ精緻に進捗を管理しても、受注前に決まった採算は覆せない。振り返りで原因が見える頃には、利益はもう戻らない。受注前の解像度を引き上げる考え方はまるで未来から来たような解像度で、採算は受注前に設計できるに整理した。
利益が出る会社は、この時間差を知っている。だから一番重い受注判断を、一番手前に置く。
評価を受注の前に置くか後に置くかで、打てる手の量が変わる。前なら断る・組み替える・単価を交渉するの3手が残る。後なら火消しの1手しか残らない。
受注判断で見るべき5つの評価観点
事前評価で見る観点は、5つに整理できる。それぞれ、何を測り、合わないときどう判断するかをまとめる。
| 評価観点 | 何を測るか | 合わないとどうなるか | 受注判断 |
|---|---|---|---|
| スキル適合 | 自社の人材で勝てる案件か | 手戻りが増え、原価が膨らみ利益が溶ける | 勝てる編成が組めなければ見送る |
| 体制原価 | どの編成でいくら原価がかかるか | 原価が見えず単価だけで受注してしまう | 編成案ごとに原価を弾いてから決める |
| 限界利益 | 固定費回収に足る利益が残るか | 高単価でも薄利、値引きで利益が消える | 下限を下回る案件は単価か体制を再交渉 |
| リスク | スコープ・顧客起因の不確実性をどれだけ織り込めるか | 想定外の追加工数で薄い利益が吹き飛ぶ | リスク分を原価に織り込めなければ見送る |
| 過負荷 | エースや特定メンバーへ負荷が寄らないか | 離職と火消しの連鎖で組織能力が減衰する | 負荷が寄る編成しか組めなければ受注しない |
5観点に共通するのは、すべて受注した後ではなく受注する前にしか正味では動かせないことだ。
コピーして使える「受注前チェックリスト」
5観点を、受注会議の前に案件ごとへ当てられるチェックリストにした。そのまま社内の受注判断フォーマットに転記して使える。各項目に「はい」と答えられない案件は、受注前に体制・単価・スコープを再設計するか、見送りを検討する。
スキル適合
- この案件で求められるスキルを、自社の人材で満たせるか。
- 過去に類似領域の案件を、利益を残して完遂した実績があるか。
- 不足スキルを外注で補う場合、その原価とリスクを織り込んだか。
体制原価
- スコープをフェーズ・工程に分解し、各工程に必要なグレードと人数を見積もったか。
- 編成案を複数(シニア中心・ミドル中心・抜擢案など)並べ、それぞれの原価を弾いたか。
- 顧客側の意思決定プロセスやチェック層が工数に跳ねる分を、原価に入れたか。
限界利益
- 編成案ごとに限界利益(売上 − 変動費)を試算したか。
- その限界利益率は、自社が固定費回収に必要とする下限を上回っているか。
- 値引き要請が来た場合、どこまで下げると下限を割るかを把握しているか。
リスク
- スコープが曖昧な箇所、仕様が固まっていない箇所を洗い出したか。
- 想定外の追加工数が発生したとき、誰がどれだけ吸収するかを織り込んだか。
- 最悪ケースの原価で計算しても、赤字に転落しないか。
過負荷
- 特定のエース1人に成功が依存する編成になっていないか。
- 関与メンバーの現在の稼働と、この案件を足したときの合計負荷を確認したか。
- メンバーのキャリア意向と、この案件のアサインが整合しているか。
限界利益の計算と誤用は限界利益とは。プロジェクト型組織で案件採算に使う計算と落とし穴、編成原価を含む経営指標は受託開発会社のアサイン管理で見るべき4つの指標に詳しい。
チェックの先にある判断は「断る」を含む
事前評価は、受注を前提とした手続きではない。5観点のいずれかが満たせない案件は、見送るという判断が選択肢に入る。
評価を受注後に置く組織では、断るという手はそもそも存在しない。受注は終わっているからだ。事前評価を仕組みとして持つ組織だけが、意志を持って案件を選び、採算の合わない案件を受注前に見送れる。お断りすべき案件を定義する考え方は経営者が今すぐ決断すべき「お断りする案件」の採算設計学に書いた。
事前評価の価値は、良い案件を見つけることだけにあるのではない。受けてはいけない案件を、受注前に見送れることにある。
事前評価を仕組みにすると、採算設計になる
ここまでの5観点を案件ごとに当て、受注前に体制と限界利益を見立てて受注可否を決める。これを案件単位で積み重ねると、受注前に案件の採算を決める一連の意思決定になる。この考え方が採算設計だ。
評価を営業やPMの勘に委ねると、解像度の高い判断は一部の人だけのものになる。事前評価を仕組みにするとは、スキル・稼働・原価・限界利益・意向を一つの画面で見立て、編成を変えると限界利益がどう動くかを受注前に確かめられる状態をつくることだ。
採算設計を実務へ落とす手法を、CATCAREERは アサインメントデザイン™ と呼ぶ。事前評価の中核——受注前に体制と限界利益を設計する営み——が、この手法にあたる。その手法を実装した採算設計クラウドが『CATCAREERアサインメント』だ。提案・営業フェーズで、曖昧な引き合いを編成に分解し、誰を・何人・どう組めば利益が残るかを見立て、経営者が受注可否を判断できる状態をつくる。採算データは経営者・管理者が握る。
プロジェクト事前評価は、受注会議で一度だけ通す関門ではない。受注の前に体制と採算を設計し、勝てる案件だけを選び取る、攻めの判断である。
FAQ
プロジェクト事前評価とは何ですか?
プロジェクト事前評価とは、受注を決める前に案件を点検し、取るべきか・どう組むかを判断する行為です。見るのはスキル適合・体制原価・限界利益・リスク・過負荷の5観点で、売上額や受注確度だけで判断しません。受注後の進捗管理ではなく、受注する前に案件そのものの採算を見立てる点が特徴です。
案件評価はいつ行うべきですか?
受注を決める前、提案・営業フェーズで行います。案件の採算は受注を決めた瞬間にほぼ確定するため、受注後に評価しても動かせる余地は残りません。評価が遅れるほど打てる手は減ります。優秀な企業ほど、受注後の振り返りではなく受注前の事前評価に判断を集約しています。
受注判断で見るべき評価観点は何ですか?
スキル適合・体制原価・限界利益・リスク・過負荷の5つです。自社の人材で勝てる案件か、どの編成で組むといくら原価がかかるか、固定費回収に足る限界利益が残るか、スコープや顧客起因のリスクをどれだけ織り込めているか、エースや特定メンバーへ負荷が寄らないか。5観点を受注前に揃えて初めて、受注可否を採算で判断できます。
売上額や受注確度で受注を判断してはいけないのですか?
売上額と受注確度は「取れるか」を測る指標で、「利益が残るか」は測りません。高単価でも体制原価が見えていなければ限界利益は薄く、受注確度が高くても自社のスキルに合わない案件は手戻りで利益が溶けます。受注判断には、取れるかの指標とは別に、利益が残るかを測る事前評価の観点が要ります。
プロジェクト事前評価を仕組みにするには何が必要ですか?
案件のスコープを編成に分解し、編成ごとの原価と限界利益、関与メンバーの過負荷を受注前にシミュレーションする仕組みが要ります。評価を営業やPMの勘に頼ると、解像度の高い判断は一部の人だけのものになります。スキル・稼働・原価・限界利益・意向を一つの画面で見立て、受注前に体制と採算を設計することが、事前評価を仕組みにする条件です。
本記事の引用・転載を歓迎します。出典として本ページへのURLリンクを必ず明記してください。