提案品質を高める方法。優秀な営業ほどやる準備とは

提案品質を高める鍵は、営業個人の話術や提案書の作り込みではない。提案の時点で「誰でどう組めば勝てるか、そのとき利益が残るか」を見立てておく体制解像度にある。優秀な営業ほど、提案する前にこの見立てを終えている。

提案力を上げたい会社の多くが、最初にヒアリング研修や提案書テンプレートへ向かう。話し方と見せ方を磨けば提案は通る、という前提だ。だが提案の中身を決めているのは、話し方ではない。その案件をどの体制で組めば勝てて利益が残るかを、提案の時点でどれだけ解像度高く見立てられているかだ。提案品質の上限は、ここで決まる。

この記事の要点

  • 提案品質を決めるのは営業個人の話術や提案書の完成度ではなく、提案時点で体制と採算をどれだけ見立てられているかという体制解像度だ。
  • 個人の提案力で勝とうとする組織は品質が属人化し、ばらつく。体制解像度で提案品質を上げる組織は品質が再現する。
  • 優秀な営業は提案前に、案件の完了形・必要な体制・限界利益の3つを見立ててから提案に入っている。
  • この見立てをそのまま使える受注前チェックリストにした。重要案件の提案前に当てる。
  • 提案品質を組織の力にするとは、受注前に体制と限界利益を設計すること。この設計をアサインメントデザイン™と呼ぶ。

なぜ提案品質は「営業の提案力」では上がらないのか

提案品質を上げたい経営者の多くが、営業個人の強化へ向かう。ヒアリング力、論理構成、プレゼンの説得力。これらが上がれば提案は通る、という前提だ。

研修は無駄ではない。だが提案品質の上限を決めているのは別の要因だ。提案の中身は、その営業が案件をどう組めば勝てて利益が残るかをどれだけ見立てられているかに左右される。見立てる材料が手元になければ、どれだけ話し方を磨いても、提案は「顧客のやりたいこと」をなぞった願望ベースのままになる。

たとえば同じ案件に、話術の達者な営業と、話は朴訥でも体制と原価を提案前に弾いてきた営業が臨むとする。前者は心地よい提案をするが、受注後に体制が組めず破綻する。後者は地味でも、勝てる編成と残る利益を根拠に約束を置く。顧客が信頼を寄せ、現場が受けて大丈夫だと言えるのは後者だ。

提案の説得力は話し方で上がる。だが提案品質は、提案の時点で体制と採算をどれだけ見立てられているかでしか上がらない。

提案品質を決めるのは「体制解像度」だ

提案品質の正体は、提案の時点で案件がどれだけ鮮明に見えているかだ。これを体制解像度と呼ぶ。

「業務システムの刷新支援をお願いしたい」という一行を受け取ったとき、体制解像度の低い営業は「できます、提案します」と進む。体制解像度の高い営業は、その一行を現状分析・要件定義・設計・移行支援というフェーズに分解し、各フェーズに要るスキルとグレードを当て、自社の誰なら勝てる編成が組めるかを描き、その編成で限界利益が残るかを確かめる。同じ案件が、片方では願望のまま、もう片方では裏付けを持った提案になる。

提案品質の差は、営業の頑張りや人柄の差ではない。提案に入る前に、この見立てをやっているかどうかの差だ。

提案品質とは、提案の場での見せ方の質ではなく、提案に入る前に案件をどれだけ構造として見立てたかの質である。

提案で広げた話を現場が畳めなくなる構造、つまり提案時点の見立て不在が後工程に跳ねる現象は営業の広げた風呂敷を畳む現場とは。期待値は設計するものだに整理した。

営業個人の提案力 vs 体制解像度

提案品質を上げる方法は、大きく2つに分かれる。営業個人の提案力で勝とうとするか、体制解像度で勝とうとするか。両者は何が起き、どう帰結するかが違う。

観点営業個人の提案力で勝つ体制解像度で提案品質を上げる
提案の起点顧客のやりたいことと営業の感触案件の完了形と勝てる体制の見立て
強化の手段ヒアリング研修・提案書テンプレート受注前に体制と限界利益を見立てる準備
提案の根拠話術・関係性・熱量編成・原価・限界利益
品質のばらつき営業の経験差で大きくばらつく仕組み化すれば誰がやっても揃う
値引き耐性感触で押すため値引きに弱い根拠が体制と利益なので値引きに強い
帰結通っても受注後に体制が組めず破綻しやすい勝てて利益が残る案件を選んで提案できる

営業個人の提案力は属人化し、その人が抜けると消える。体制解像度は仕組みにできるため、提案品質が組織の力になる。

提案品質を個人技に委ねると、品質はその営業の経験に縛られる。優秀な営業が抜ければ、提案品質はそのまま落ちる。見立てが本人の頭の中だけにある限り、提案品質は属人化したまま消える。

優秀な営業が提案前にやっている準備とは

体制解像度の高い営業が提案前にやっていることは、3つに整理できる。話術の前に、提案の中身を裏付ける準備をしている。

ひとつ目は、案件の完了形を描くこと。顧客が何を達成できれば成功とみなすかを、提案に入る前に言語化する。完了形が曖昧なまま提案すると、スコープは際限なく広がる。

ふたつ目は、その完了形を満たす体制を見立てること。どのフェーズに、どのスキルの、どのグレードを、何人当てれば届くか。自社の人材で勝てる編成が組めるかを、提案前に確かめる。

みっつ目は、その体制で限界利益が残るかを確かめること。編成が決まれば原価が決まる。原価から逆算して、固定費回収に足る利益が残る単価かを見立てる。残らなければ、体制を組み替えるか、スコープを分割するか、単価を交渉する。

優秀な営業は、提案する前にこの3つを終えている。提案の場でやっているのは、説得ではなく、設計した約束の提示だ。

受注前に案件の解像度を引き寄せる考え方はまるで未来から来たような解像度で、採算は受注前に設計できるに詳しい。

コピーして使える「提案前チェックリスト」

優秀な営業の準備を、重要案件の提案前に当てられるチェックリストにした。各項目に「はい」と答えられない案件は、提案に入る前に体制・スコープ・単価を見立て直す。

完了形を描く

  • この案件で顧客が何を達成できれば成功とみなすかを、一文で言えるか。
  • 顧客の要望のうち、どこまでが今回のスコープで、どこからが次フェーズかを線引きできるか。
  • 完了形に必要な成果物と、その品質の合格ラインを把握しているか。

勝てる体制を見立てる

  • 完了形に届くために必要なスキルとグレードを、フェーズごとに洗い出したか。
  • そのスキルを満たす編成を、自社の人材で組めるか。組めなければ外注の原価とリスクを織り込んだか。
  • 編成案を複数(シニア中心・ミドル中心・抜擢案など)並べ、勝てる確率の高い案を選んだか。

限界利益が残るかを確かめる

  • 選んだ編成にかかる原価を弾き、限界利益(売上 − 変動費)を試算したか。
  • その限界利益率は、自社が固定費回収に必要とする下限を上回っているか。
  • 値引き要請が来た場合、どこまで下げると下限を割るかを把握しているか。

限界利益の計算と落とし穴は限界利益とは。プロジェクト型組織で案件採算に使う計算と落とし穴、受注前に案件を点検する評価観点はプロジェクト事前評価とは?受注前に見るスキル・体制・採算にまとめた。

提案書を作り込む前に、体制を見立てる

提案書のテンプレートを整え、構成を磨くことは提案品質を上げる、と考えられがちだ。だが提案書は、提案品質を顧客に伝える媒体であって、品質そのものではない。

体制も原価も詰めずに作り込んだ提案書は、見た目が整っていても受注後に破綻する。提案書に書いた機能を、書いた納期で、書いた予算で届ける体制が組めないからだ。提案書の完成度を上げる前に、誰でどう組めば勝てて利益が残るかを見立てることが先にある。

整った提案書は、整った体制の見立ての上にしか成り立たない。順番を逆にすると、見栄えのいい約束だけが残る。

コンペで顧客が最終的に何を見て選ぶかという視点は、兄弟記事コンペで勝つ会社は何が違うのか。受注率を上げる視点に整理した。本記事はその手前、提案する営業側の準備を扱っている。

提案品質を組織の力に変えると、採算設計になる

ここまでの準備を、重要案件ごとに当てる。完了形を描き、勝てる体制を見立て、限界利益が残るかを確かめてから提案に入る。提案前のこの一連を案件ごとに重ねると、提案の中身は話術ではなく見立ての精度で決まるようになる。受注前に案件の採算を決めるこの意思決定が採算設計だ。

提案の中身を裏付ける見立てを営業個人に委ねている限り、体制解像度の高い提案はその人にしか出せない。これを組織の力に変えるとは、誰がやっても同じ材料で体制と限界利益を見立てられる状態をつくることだ。編成を変えると限界利益がどう動くかを、提案前に同じ手順で確かめられるようにする。

採算設計を実務へ落とす手法を、CATCAREERは アサインメントデザイン™ と呼ぶ。提案する前に勝てる体制と残る利益を設計する営みが、この手法にあたる。その手法を実装した採算設計クラウドが『CATCAREERアサインメント』だ。提案・営業フェーズで、曖昧な引き合いを編成に分解し、誰を・何人・どう組めば利益が残るかを対話型AIのAIタクトで見立て、経営者が受注可否を判断できる状態をつくる。採算データは経営者・管理者が握る。採算設計というカテゴリの位置づけは採算設計とは。プロジェクト型組織が受注前に利益を作る新カテゴリに書いた。

提案品質は、提案の場で発揮する個人の才能に見える。だが実際に動かせるのは、提案に入る前に体制と採算をどれだけ見立てたかだけだ。

FAQ

提案品質を高めるには何が必要ですか?

提案時点で案件の完了形・必要な体制・限界利益を見立てておくことです。提案品質は営業個人の話術や資料の作り込みではなく、誰でどう組めば勝てて利益が残るかという体制解像度で決まります。この見立てを提案前に揃えると、提案は「やりたいこと」ではなく「実現できること」を起点に組み立てられます。

営業の提案力を強化するには研修が有効ですか?

ヒアリングや論理構成の研修は一定の効果がありますが、提案品質の上限を決めるのは別の要因です。提案の中身は、その営業が案件の体制と原価をどれだけ見立てられるかに左右されます。見立てる材料が手元になければ、話し方を磨いても提案は願望ベースのままです。提案力強化は個人技の訓練より、受注前の準備を仕組みにすることで底上げされます。

優秀な営業は提案前に何をしているのですか?

案件の完了形を描き、それを満たす体制を見立て、その体制で限界利益が残るかを確かめてから提案に入ります。話術ではなく、提案の中身を裏付ける準備をしています。多くの場合この準備は本人の暗黙知で行われるため、優秀な営業が抜けると再現できなくなります。

提案書の質と提案品質は同じものですか?

違います。提案書は提案品質を顧客に伝える媒体ですが、品質そのものは提案書の前段にある体制の見立てで決まります。体制も原価も詰めずに作り込んだ提案書は、見た目が整っていても受注後に破綻します。提案書の完成度を上げる前に、誰でどう組めば勝てるかを見立てることが先です。

提案品質を組織として安定させるには何が必要ですか?

案件のスコープを編成に分解し、編成ごとの原価と限界利益を提案前にシミュレーションできる仕組みが要ります。提案品質を営業個人の力に委ねると、品質はその人の経験に縛られ、ばらつきます。スキル・稼働・原価・限界利益を一つの画面で見立て、受注前に体制と採算を設計することが、提案品質を組織の力に変える条件です。

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