人員配置の最適化とは。空きを埋めず利益を最大化する

人員配置の最適化とは、空いている人を案件に埋めることではなく、限られた人材をどの案件にどう組み合わせれば利益が最大になるかを設計することだ。稼働率を埋める発想で配置すると、稼働は上がっても利益は残らない。最適化の目的関数は、稼働率ではなく限界利益に置く。

人員配置の最適化を調べると、空き工数をなくす話、稼働率を上げる話が並ぶ。だが稼働率を上げることと利益を最大にすることは、同じ作業ではない。最適化という言葉が指す「何を最大にするのか」を取り違えると、人は動き続けているのに利益は薄いまま、という状態に着地する。最適化の出発点は、目的関数を決め直すことだ。

この記事の要点

  • 人員配置の最適化とは、空きを埋めることではなく、限られた人材の組み合わせで利益を最大にする設計だ。
  • 稼働率を目的関数に置くと、稼働は上がっても薄利案件に人が埋まり利益は残らない。
  • 最適化の目的関数は稼働率ではなく案件ごとの限界利益に置き換える。これが効くレバーである。
  • 人員配置システム(スケジューラ)は箱を埋める道具で、利益が最大になる組み合わせを解く道具ではない。
  • 利益が最大になる配置は受注前に決まる。配置の最適化は、受注前に利益を作る採算設計の中核だ。

なぜ稼働率を上げても利益が増えないのか

人員配置の最適化が稼働率の話にすり替わるのは、稼働率が測りやすいからだ。誰が何時間動いているかは集計できる。だから「遊休をなくす=最適化」という等式が、検証されないまま広まる。

稼働率は、人が動いているかを測る指標だ。その動きが利益を生んだかは、稼働率からは見えない。薄利の案件に人を埋めても稼働率は100%に近づく。だがその時間は、人件費という現金を消費しているだけで、限界利益はほとんど残らない。稼働率の分母と分子には、利益という言葉が一度も出てこない。

ここで起きているのは、最適化の目的関数の取り違えだ。最適化とは「ある目的関数を最大(または最小)にすること」で、何を最大にするかを決めて初めて成立する。目的関数に稼働率を置けば、出力は「人が遊んでいない状態」になる。目的関数に限界利益を置けば、出力は「利益が最大になる組み合わせ」になる。同じ「最適化」でも、置く目的関数で行き着く配置はまるで違う。

稼働率の最適化と利益の最適化は、最大化している対象が違う。稼働率を埋め切った配置が、利益を最大にする配置とは限らない。

稼働率100%がむしろ採算を削る具体的な経路は埋めるほど利益は逃げる。「稼働率100%」という錯覚に書いた。

稼働率最適化 vs 利益最適化

二つの最適化を、軸ごとに並べる。同じ「人員配置の最適化」という言葉が、目的関数の違いでまったく別の配置を生むことが分かる。

観点稼働率最適化(空きを埋める)利益最適化(組み合わせを作る)
目的関数稼働率(遊休時間の最小化)案件ごとの限界利益の最大化
配置の起点誰が空いているかどの案件に誰を組めばいくら残るか
成功指標稼働率が100%に近いか配置後の限界利益が最大か
陥る罠薄利案件に人が埋まり稼働は上がる短期の空き工数が一時的に残る
経営インパクト人は動くが利益は薄いまま積み上がる同じ人数でも残る利益の総額が増える

二つは対立ではない。空き工数の可視化は、利益最適化の入力としても使える。だが目的関数を稼働率に固定したままでは、空きが埋まった瞬間に最適化は止まる。埋まった先の利益は、誰も最大化していない。

最適化の目的関数を稼働率から限界利益へ置き換えると、配置の起点も成功指標も入れ替わる。これが人員配置の最適化で最初に効くレバーだ。

そもそも配置を語るとき、キャパシティプランニング・リソース管理・アサイン管理という似た言葉が混ざりやすい。本記事は「最適化とは何を最大にすることか」に絞ったが、各語の指す範囲の違いはキャパシティプランニング・リソース管理・アサイン管理の違いに整理した。

人員配置システムを入れても最適化されない3つの理由

目的関数を入れ替えると決めても、現場の解決策はしばしば「人員配置システムを入れる」に向かう。だがシステム(スケジューラ)は、誰がいつ空くかを可視化して箱を埋める道具だ。利益が最大になる組み合わせを解く道具ではない。システムを入れても利益が最適化されない理由は、三つに分かれる。

  1. スキルが最新でない。 配置の精度は、誰が何をどこまでできるかのデータに依存する。スキルシートが半年前のまま更新されなければ、システムは古い前提で人を当てる。最新でない入力からは、最適な組み合わせは出てこない。

  2. 配置が原価と紐づかない。 スケジューラは「埋まっているか空いているか」は表示するが、その配置がいくらの限界利益を生むかは計算しない。グレードミックスで原価が動いても、利益の列が無ければ、利益が最大になる組み合わせは選べない。

  3. 本人意向が入らない。 やりたい領域に置かれた人材は定着し能力を出し切るが、意向を無視した配置は中期に稼働低下や離脱で利益を削る。本人の意向という変数が入らないシステムは、短期の箱埋めには合理的でも、利益の持続を最適化できない。

この三つが埋まらない限り、システムは稼働率の最適化に留まる。箱を埋める速度は上がるが、目的関数が稼働率のままだからだ。システムは入力を整える道具であって、最適化の目的関数を決めるのは経営の意思決定だ。

スキルの最新性と原価を同時に見る配置の考え方はスキルベースアサインとは。案件成功確率で配置する編成設計に、人材の価値が配置で決まる構造は人的資本経営と人材配置の関係。価値は配置で決まるに書いた。

利益が最大になる配置は、いつ決まるのか

目的関数を限界利益に置くと、もう一つの問いが立つ。その利益が最大になる配置は、いつ決められるのか。答えは、受注後ではなく受注前だ。

案件の限界利益は、どの案件を、いくらで、誰を組んで受けるかで、受注を決めた一瞬にほぼ確定する。安すぎる単価で受け、原価の重いグレードで組んだ案件は、走り出してから配置を組み替えても黒字には戻りにくい。配置を後から最適化しようとしても、利益が決まる瞬間はすでに過ぎている。

つまり人員配置の最適化は、受注後の人員パズルを上手に解く話に見えて、本当の勝負は受注前にある。受注前に、どの案件に誰をどう組めば限界利益が最大になるかを設計しておく。この受注前の配置設計を採算まで含めて行う考え方を、CATCAREERは採算設計と呼ぶ。

採算設計とは、プロジェクト型組織が案件ごとの利益を受注前に設計する考え方である。人員配置の最適化は、その採算設計の中核に位置する。

利益が決まる受注前という時間軸の意味は採算設計とは。プロジェクト型組織が受注前に利益を作る新カテゴリに、目的関数に置く限界利益そのものの計算と落とし穴は限界利益とは。プロジェクト型組織で案件採算に使う計算と落とし穴にまとめた。

採算設計を実務に落とす手法を、CATCAREERは アサインメントデザイン™ と呼ぶ。受注前に体制と限界利益を設計する営みで、可視化したスキル・稼働・本人意向を入力に、利益が最大になる組み合わせを受注前に組み立てる。配置と採算の試算は対話型AIの AIタクト が案件参謀役として担う。その手法を実装した採算設計クラウドが『CATCAREERアサインメント』だ。

人員配置の最適化は、空きを埋める作業ではない。限られた人材の組み合わせで利益を最大にする設計であり、その設計は人が動き出す前に終わっている。目的関数を稼働率から限界利益へ置き換えること。最適化はそこから始まる。

FAQ

人員配置の最適化とは何ですか?

人員配置の最適化とは、空いている人を案件に埋めることではなく、限られた人材をどの案件にどう組み合わせれば利益が最大になるかを設計することです。空きを埋める発想で配置すると稼働は上がっても利益は残りません。最適化の目的関数を稼働率ではなく案件ごとの限界利益に置くことが、人員配置の最適化の核です。

なぜ稼働率を上げても利益が増えないのですか?

稼働率は人が動いているかを測る指標で、その動きが利益を生んだかは語らないからです。薄利の案件に人を埋めれば稼働率は100%に近づきますが、その時間は人件費を消費するだけで限界利益はほとんど残りません。稼働率の最大化は箱を埋める作業であり、利益の最大化とは目的関数が違います。

人員配置の最適化はどう進めればよいですか?

最適化は、目的関数を稼働率から案件ごとの限界利益へ置き換えるところから始めます。誰が空いているかではなく、どの案件にどのスキルとグレードを組めば利益が最大になるかを起点にし、受注前にその組み合わせと採算をシミュレーションします。稼働の調整ではなく、利益が最大になる編成を設計する意思決定として配置を扱います。

人員配置システムを入れれば最適化されますか?

配置システム(スケジューラ)は誰がいつ空くかを可視化し箱を埋める道具で、利益が最大になる組み合わせを解く道具ではありません。スキルが最新でない・配置が原価と紐づかない・本人意向が入らない、の三点が埋まらなければ、システムを入れても稼働率の最適化に留まります。システムは入力を整える道具で、最適化の目的関数を決めるのは経営です。

稼働率の最適化と利益の最適化はどう違いますか?

稼働率の最適化は空き工数を埋めて人の遊休をなくすことで、目的関数は稼働率です。利益の最適化は限られた人材の組み合わせを作って案件ごとの限界利益を最大にすることで、目的関数は限界利益です。前者は誰が空いているかを起点にし、後者はどの案件に誰を組めばいくら残るかを起点にします。両者は似て見えて、最大化している対象が違います。

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