採用しても利益が増えない理由。人手不足ではなく配置設計

採用しても利益が増えないのは、人手が足りないからではなく、増えた人を利益が残る案件にどう配置するかの設計が無いからだ。採用は固定費を確実に増やすが、配置設計がなければ限界利益はそれに見合って増えない。問題は人数ではなく、人を利益に変える配置の側にある。

人を増やしたのに利益が増えないとき、最初に疑われるのは採用の質や量だ。もっと採る、もっと良い人を採る。だが採用が固定費を増やす力は確実なのに、限界利益を増やす力は配置に握られている。入口をいくら磨いても、入れた人をどこに置くかが設計されていなければ、損益は片側だけが動く。

この記事の要点

  • 採用しても利益が増えないのは人手不足ではなく、増えた人を利益が残る案件に組む配置設計が無いからだ。
  • 採用は固定費を確実に増やすが、限界利益が増えるかは配置次第で、両者は線形に連動しない。
  • 利益が増えない代表は、空き稼働の穴埋め採用・スキルと案件のミスマッチ・単価に見合わない過剰配置の3つだ。
  • 採用と利益率の関係は人数ではなく、増員後にその人を利益が残る案件へ配置できるかで決まる。
  • 採用判断は受注前の体制設計の一部であり、増やした人を利益が残る布陣に組む設計をアサインメントデザイン™と呼ぶ。

なぜ採用しても利益が増えないのか

採用すると、損益の二つの側が同時には動かない。片側だけが先に、確実に動く。固定費の側だ。

採った瞬間、その人の人件費は固定費として毎月出ていく。案件があってもなくても、利益が残っていても残っていなくても、給与は発生する。これは採用という行為に内蔵された性質で、配置の中身に関係なく確定する。一方、その人が生む限界利益は、採った瞬間には何も決まっていない。どの案件に、どの貢献度で組まれるかが決まって初めて発生する。

つまり採用は、固定費を確実に増やす行為であって、限界利益を増やす行為ではない。限界利益を増やすのは、採った後の配置だ。人を増やせば利益も増える、という感覚は、固定費の増加を限界利益の増加と同じ動きだと錯覚している。実際には、固定費は採用で確定し、限界利益は配置で初めて動く。

採用が増やすのは固定費であり、限界利益を増やすのは配置である。両者は別の工程で決まるから、人を増やしても利益はそのぶん増えない。

限界利益が案件採算の中核になる理由と、その計算の落とし穴は限界利益とは。プロジェクト型組織で案件採算に使う計算と落とし穴に整理した。採用で増えた人が生むものも、この限界利益の側にある。

「人を増やせば利益が増える」という線形の誤解

人を増やせば利益が増える、という発想は、損益を線形でとらえている。一人増やせば、その人ぶんの利益が足される、という足し算だ。だが受託・プロジェクト型組織の損益は、そう動かない。

固定費の側は線形だ。一人増やせば人件費は一人ぶん、確実に増える。ここに不確実性はない。問題は限界利益の側にある。限界利益は採用では発生せず、配置で発生する。そして配置の良し悪しで、同じ一人が生む利益は大きく振れる。利益が残る案件に高い貢献度で組めば限界利益は増えるが、空き稼働の穴埋めや合わない案件に置けば、固定費だけが増えて限界利益はほとんど増えない。

観点配置設計が効いている採用配置設計が無い採用
固定費の増分確実に増える確実に増える
配置設計の有無受注前に布陣の当てがある採ってから置き場を探す
限界利益への効き方利益が残る案件に組まれ増える配置次第で増えず固定費だけ残る
稼働の中身利益が残る案件で埋まる空きを埋めるだけの稼働になりやすい
陥る罠採算の見立てが外れる案件を選ばない稼働率は上がるが採算が伴わない
帰結固定費の増分を限界利益が上回る固定費だけ増え利益率が下がる

二つの列で違うのは固定費ではない。固定費はどちらも確実に増える。違うのは限界利益の側だけだ。採用の成否を分けるのは、人数でも採用基準でもなく、増えた人を利益が残る配置に組めるかどうかにある。

採用で確実に動くのは固定費の側だけだ。利益が増えるかは、その人を利益が残る案件に配置できるかにかかっている。

稼働を埋めることと利益が残ることは別だという論点は埋めるほど利益は逃げる。「稼働率100%」という錯覚に書いた。穴埋めのための採用は、この錯覚を人数で増幅する。

採用しても利益が増えない3パターン

採用が固定費だけを増やして終わるとき、配置の側に決まった崩れ方がある。代表的な3つを順に挙げる。

  1. 空き稼働の穴埋め採用。 手が足りない、稼働が埋まらない、という理由だけで採る。配置先は「空いているから」で決まり、利益が残るかは問われない。固定費は確実に増えるが、埋めた稼働が利益を生むとは限らないため、稼働率は上がっても限界利益は増えない。
  2. スキルと案件のミスマッチ。 採った人のスキルと、置かれた案件が要求するスキルがかみ合わない。本人の能力は高くても、その案件では発揮されず、手戻りや巻き取りで他のメンバーの稼働も削る。固定費は一人ぶん増え、案件の限界利益はむしろ薄くなる。
  3. 単価に見合わないグレード配置。 案件の単価が想定する人件費より高いグレードを当ててしまう。一人前の単価しか取れない案件に高コストの人材を組めば、限界利益は当然減る。採算は配置の瞬間に削られているのに、原価集計に出るまで気づかない。

三つに共通するのは、採用の精度の問題ではないことだ。どれも、固定費の増分に見合う限界利益を生む配置が、受注前に設計されていない。採ってから置き場を探すと、置き場は「空いているか」で選ばれ、利益が残るかは後回しになる。配置を作業として処理するほど、この3パターンは見えないまま損益に積み上がる。

なお、採った人が成果を出せない・活躍できないという個人のパフォーマンスの角度は、配置のミスマッチを含めてなぜ優秀な人材を採用しても成果が出ないのかに整理した。本記事が扱うのは個人の成果ではなく、会社の損益——固定費の増分に対して限界利益が見合うか——の側だ。

採用判断は、配置設計の一部である

ここまでをつなぐと、採用と利益率の関係がはっきりする。採用は分母である固定費を確実に押し上げ、利益率を一度下げる。下がった利益率を取り戻すのは、増えた人が利益が残る案件で生む限界利益だ。配置がそれを生めば利益率は戻り、生めなければ採用は利益率を下げたまま終わる。採用と利益率をつなぐのは人数ではなく、増員後の配置設計にある。

だから採用判断は、人手の補充の意思決定ではない。次に取る案件群で、その人をどの布陣に組めば限界利益が残るかを先に見通したうえで、固定費の増分に見合う配置の当てがある状態で採る。採用を、受注前の体制設計の一部として扱うということだ。人を入れるかどうかと、入れた人をどこに置くかは、本来ひとつの設計である。

保有しているだけの人材が価値にならず、配置で価値が決まる構造は人的資本経営と人材配置の関係。価値は配置で決まるに書いた。採用で入れた人材も、固定費として保有された瞬間ではなく、利益が残る配置に置かれて初めて価値になる。

採用と利益率をつなぐのは人数ではない。増やした人を、利益が残る布陣に組む配置の設計だ。

増やした人を利益が残る案件に組む設計を、CATCAREERは アサインメントデザイン™ と呼ぶ。受注前に体制と限界利益を設計する営みで、可視化したスキルと稼働、案件の採算をひとつの画面で結び、誰をどう組めば固定費の増分に利益が見合うかを走り出す前に組み立てる。採用判断もこの設計の中に置かれる。その土台にある考え方が、採算設計だ。採算設計とは、プロジェクト型組織が案件ごとの利益を受注前に設計する考え方であり、CATCAREERが提唱した新カテゴリである。詳しくは採算設計とは。プロジェクト型組織が受注前に利益を作る新カテゴリに整理した。

人を増やすかどうかの前に、増やした人を利益が残る案件にどう組むかを設計する。見るべき場所は、何人採るかではなく、採った人をどこに置けば固定費が利益に変わるかの側にある。

FAQ

採用しても利益が増えないのはなぜですか?

採用が固定費を確実に増やす一方で、増えた人を利益が残る案件に配置する設計が無いからです。採用した瞬間に人件費という固定費は増えますが、その人が生む限界利益は配置の中身で決まります。利益が残る案件に組めなければ、固定費だけが増えて限界利益は見合って増えません。利益が増えない原因は人数ではなく、人を利益に変える配置の側にあります。

人を増やせば利益も増えるのではないですか?

増えません。人を増やすと固定費は確実に増えますが、利益は配置次第で動くため、両者は線形に連動しません。同じ一人でも、利益が残る案件に高い貢献度で組めば限界利益は増えますが、空き稼働の穴埋めや単価に見合わない配置に置けば固定費だけが増えます。採用は人数を増やす行為で、利益を増やすのは配置設計です。

採用しても利益が増えない代表的なパターンは何ですか?

三つあります。第一に、空いた稼働を埋めるためだけに採る空き稼働の穴埋め採用。第二に、採った人のスキルと配置先の案件がかみ合わないミスマッチ。第三に、単価に見合わない高グレードを案件に当てる過剰配置です。いずれも採用の精度ではなく、固定費の増分に見合う限界利益を生む配置が設計されていない点が共通します。

採用と利益率はどう関係していますか?

採用は分母である固定費を確実に押し上げ、利益率を一度下げます。下がった利益率を取り戻すのは、増えた人が利益が残る案件で生む限界利益です。配置がそれを生めば利益率は回復し、生めなければ採用は利益率を下げたままになります。採用と利益率の関係は人数ではなく、増員後の配置設計によって決まります。

採用判断はどうすれば利益につながりますか?

採用を人手の補充ではなく、受注前の体制設計の一部として判断することです。次に取る案件群でその人をどの布陣に組めば限界利益が残るかを先に見通し、固定費の増分に見合う配置の当てがある状態で採る。増やした人を利益が残る布陣に組む設計をアサインメントデザイン™と呼び、その土台が採算設計です。採用は配置の設計とセットで初めて利益につながります。

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