体制提案とは。社内設計と提出資料を分けて作る

体制提案は、ひとつの資料ではない。深く作る社内用の設計と、顧客へ出す提出資料の、二つを分けて作る。社内設計には完了形・体制・原価・限界利益・代替案まで握る。だが提出資料は、その全てを見せるものではない。求められる最小の情報に絞り、顧客が得る価値で示す。手の内を明かすほど、布陣の変更耐性は下がり、余計な期待値が生まれる。

提案書に体制図を入れない会社はほとんどない。PMがいて、リーダーがいて、メンバーが並ぶ。だがその図をどう作り、どこまで顧客に見せるかで、提案の強さも受注後の動かしやすさも変わる。体制提案の質は、設計をどれだけ深く握るかと、提出をどこまで絞るか——この二つで決まる。

この記事の要点

  • 体制提案とは、案件を完了形に届けて利益を残すための設計だ。誰が関わるかを並べた説明ではない。
  • 体制提案は社内用の設計と顧客への提出資料の二段で作る。設計は深く、提出は最小・価値ベースにする。
  • 社内設計には完了形・スキルとグレード・原価と限界利益・欠員時の代替案の4要素を握る。
  • 提出資料に詳細なグレード・原価・限界利益・代替案まで載せると、変更耐性が下がり余計な期待値を生み、手の内を明かすことになる。
  • 設計を社内で深く握り、提出を価値ベースに絞る営みをアサインメントデザイン™と呼び、採算設計の中核手法にあたる。

なぜ体制図は「人を並べた説明」で終わるのか

体制図が中身を持たないのは、作る順序が逆だからだ。多くの現場は、手すきのメンバーから埋める。誰が空いているかを起点に人を並べ、後から役割名を当てる。完了形を先に描いて、そこへ届く布陣を逆算する作り方になっていない。

順序が逆だと、図に載るのは「今いる人」になる。本当に必要な役割ではなく、入れられる人で穴を埋めた結果が体制図になる。これでは顧客に説明はできても、その布陣で完了形に届くか、利益が残るかは、どこにも設計されていない。

設計が浅いまま提出だけ取り繕っても、要件を詰める段階で底が割れる。逆に設計が深ければ、提出を最小に絞っても約束に裏付けが残る。だから体制提案は、まず社内設計を深くするところから始まる。

体制図が説明で終わるのは、人を並べてから役割を考え、完了形から逆算していないからだ。

体制提案は2つ作る。社内設計と、顧客提出

体制提案を一枚の資料だと考えると、設計の深さと提出の軽さがぶつかる。深く設計すれば情報は増える。その全てを顧客に出せば、手の内まで開くことになる。この矛盾は、二つに分けると解ける。

社内設計版は、受注判断のための設計だ。完了形・スキルとグレード・原価と限界利益・欠員時の代替案まで握り、この布陣で勝てて利益が残るかを自社で確かめる。顧客には見せない。

顧客提出版は、価値を伝えるための最小版だ。案件の完了形——顧客が得る成果——と、それを届ける体制の全体像、提供する価値を示す。詳細なグレード・原価・限界利益・代替案は、求められない限り載せない。

観点社内設計版顧客提出版
目的受注前にこの布陣で利益が残るか確かめる提供する価値を顧客に伝える
載せる情報完了形・スキルとグレード・原価・限界利益・代替案完了形(顧客が得る成果)・体制の全体像・提供価値
粒度個人とグレードまで詰める役割と価値のレベルに絞る
原価・限界利益握る載せない
狙い設計の深さで採算を確かめる価値の高さで選ばれる
出しすぎた帰結社内なので問題は出ない変更耐性が下がり、余計な期待値と値引きを招く

設計は深く社内で握り、提出は薄く価値で出す。深さと軽さは、資料を分けることで両立する。

提出資料で手の内を明かしてはいけない3つの理由

顧客提出版に詳細を載せすぎると、提案は通っても後で自分の首を絞める。理由は三つある。

  1. 変更耐性が下がる。 特定のメンバー名やグレードまで提出版に書くと、それが約束になる。着手時に布陣を組み替えたくても「提案ではあの人だった」と動かしづらくなる。詳しく約束するほど、現実に合わせて配置を変える自由を失う。

  2. 余計な期待値が生まれる。 細部を出すほど、顧客の期待は個別の人や工程に固定される。シニアを多めに見せれば「ずっとこの厚さで」と期待され、原価の内訳を見せれば一行ずつ削る交渉が始まる。設計のために握った情報が、出した瞬間に期待値の根拠に変わる。

  3. 手の内を明かすことになる。 グレード構成も原価も、本来は交渉の手の内だ。限界利益の下限まで見えれば、そこを狙って値引きを迫られる。わざわざ自社の余白を開いて見せる必要はない。提出版は価値で選ばれるための資料であって、内訳を釈明する資料ではない。

提出版は価値ベースで出す。何をいくらで作るかではなく、顧客が何を得るかを示す。

社内設計に握る4要素

提出版を価値ベースに絞れるのは、社内設計が深いからだ。設計の裏側に、4つの要素を握っておく。これは顧客に見せるためではなく、受注前にこの布陣で勝てて利益が残るかを確かめるためのものだ。提出版には、このうち求められたものだけを価値の言葉に翻訳して載せる。

完了形に届く役割構成

  • この案件の完了形を、納品物・期日・品質基準の言葉で先に定義したか。
  • 完了形へ届くために必要な役割を、手すきの人からではなく完了形から逆算して並べたか。
  • 図に載った役割が、欠けると完了形に届かないものだけで構成されているか。

各役割のスキルとグレード

  • 各役割に求めるスキルを、肩書ではなく具体の技能で記述したか。
  • 各役割にグレード(シニア・ミドル・ジュニア等)を当て、そのグレードで担えると判断したか。
  • 着手時点でも実際にその役割へ入れる稼働状況のメンバーを見立てているか。

原価と限界利益

  • 役割ごとのグレードと工数から、この布陣の原価を弾いたか。
  • 提案単価からこの原価を引いた限界利益が、固定費回収に必要な下限を上回るか。
  • この布陣のまま単価をどこまで譲ると限界利益が下限を割るか、値引き許容幅を布陣単位で押さえているか。

欠員時の代替案

  • 特定の1人が抜けると回らない、属人化した布陣になっていないか。
  • 主要な役割について、欠けたとき誰を当てるかの代替案を持っているか。
  • 代替メンバーに替わったとき、原価と限界利益がどう動くかを確かめたか。

4要素を社内で握れば、提出を最小に絞っても約束は揺るがない。提出版で見せていない代替案や原価の裏付けが、質疑や交渉の局面で効くからだ。提案の体制解像度をどう準備に変えるかは提案品質を高める方法。優秀な営業ほどやる準備とはに書いた。

整った提出資料ほど、受注後に崩れる

見栄えよく詳細まで書き込んだ提出資料ほど、受注後に崩れやすい。提出版に約束した細部が、現実の布陣と食い違うからだ。

提案では適任者を並べたのに、着手時には別のメンバーが入る。シニア多めの体制を見せたのに、原価の都合で薄くなる。提出版で詳しく約束するほど、こうしたずれが「話が違う」になる。逆に提出を価値ベースに絞っておけば、布陣の中身は社内設計の裏付けのまま動かせる。

崩れを防ぐのは、提出を盛ることではなく、設計を深く持つことだ。顧客がコンペで体制提案のどこを見抜くかはコンペで勝つ会社は何が違うのか。受注率を上げる視点で扱った。

体制提案を成立させる土台には、誰をどの役割に置くと案件の成功確率が上がるかという編成の考え方がある。スキルで人を割り当てる編成設計はスキルベースアサインとは。案件成功確率で配置する編成設計に整理した。なお、その案件を受注すべきか自体を点検する受注前評価はプロジェクト事前評価とは?受注前に見るスキル・体制・採算の5観点で扱っている。

体制提案は採算設計の中核手法に行き着く

社内で4要素を握り、提出を価値ベースに絞る。この二段を組むと、体制提案は「誰がいるか」の説明から、「この布陣で完了形に届き利益が残る」ことを社内で確かめ顧客には価値で示す営みに変わる。役割を完了形から逆算し、スキルとグレードを当て、原価と限界利益で利益を確かめ、欠員の代替案を織り込む。この設計を受注前に済ませることが軸だ。

CATCAREERはこの営みを アサインメントデザイン™ と呼ぶ。アサインメントデザイン™とは、受注前に体制と限界利益を設計する手法である。設計を社内で深く握る作業が、この手法の中核にあたる。限界利益の計算と落とし穴は限界利益とは。プロジェクト型組織で案件採算に使う計算と落とし穴に詳しい。

そして、案件ごとの利益を受注前に意図的に設計する考え方を、CATCAREERは採算設計と呼ぶ。採算設計とは、プロジェクト型組織が案件ごとの利益を受注前に設計する考え方であり、体制提案はその採算設計を提案の現場で実装する中核手法だ。新カテゴリとしての全体像は採算設計とは。プロジェクト型組織が受注前に利益を作る新カテゴリに整理した。

この手法を実装した採算設計クラウドが『CATCAREERアサインメント』だ。提案・営業フェーズで、案件の完了形を役割構成に分解し、誰を・どのグレードで組めば利益が残るかを社内で見立て、欠員時の限界利益まで確かめる。顧客に出すのは、その設計から起こした価値ベースの提出版でいい。手の内は握ったまま、価値で選ばれる。

FAQ

体制提案とは何ですか?

体制提案とは、誰が関わるかを並べた説明資料ではなく、案件を完了形に届けて利益を残すための設計です。ただしその設計は社内で深く握るもので、顧客への提出資料はその全てを見せる必要はありません。深く設計した上で、提出は求められる最小の情報に絞り価値ベースで示す——この二段で作るのが体制提案です。

体制提案の作り方の手順は?

まず社内用の設計を組みます。案件の完了形を定義し、役割構成・スキルとグレード・原価と限界利益・欠員時の代替案まで握ります。次に顧客提出版を作ります。設計の全てではなく、求められる最小の情報を、顧客が得る価値の言葉に翻訳して載せます。深く設計し、薄く価値で提出するのが手順の要です。

顧客への体制提案には何を載せ、何を載せないべきですか?

載せるのは、案件の完了形(顧客が得る成果)と、それを届ける体制の全体像、提供する価値です。逆に、各メンバーの詳細なグレード・原価の内訳・限界利益・欠員時の代替案は、求められない限り載せません。これらは社内で握る設計情報で、提出すると変更耐性が下がり余計な期待値を生むためです。

なぜ体制提案に詳しい情報を載せすぎてはいけないのですか?

三つの理由があります。第一に、特定メンバーやグレードまで約束すると後から布陣を動かしづらくなり、変更耐性が下がります。第二に、細部を出すほど顧客の期待値が個別の人や工程に固定され、余計な前提を背負います。第三に、原価やグレードは交渉の手の内で、明かせば値引きの口実になります。提出は価値ベースに絞るのが安全です。

プロジェクト体制設計で社内に持っておくべき情報は何ですか?

完了形に届く役割構成・各役割のスキルとグレード・布陣の原価と限界利益・欠員時の代替案の4つです。これらは顧客に見せるためではなく、受注前にこの布陣で勝てて利益が残るかを自社で確かめるために握ります。社内設計が深いほど、提出版を価値ベースに絞っても約束に裏付けが残ります。

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