コンサルティング

シニアが手を動かした瞬間、ファームの利益は消える

優秀なマネージャーほど、現場で手を動かしている。難しい論点ほど本人に集まり、クライアントの信頼が厚いほど指名され、最後の資料は自分で仕上げる。チャージャビリティ(稼働率)はいつも高い。なのに、その人が回す案件ほど、なぜか利益が薄い。

矛盾ではない。コンサルの利益構造の、ど真ん中で起きている現象だ。

この記事の要点

  • コンサルの利益はチャージャビリティ(稼働率)ではなく、レバレッジで決まる。
  • レバレッジとは、シニアの高単価でジュニアの工数をどれだけ梃子にしたか、である。
  • シニアがデリバリーに降りた瞬間、レバレッジは崩れ、稼働率が高いほど高原価の人材を安い作業に張ることになる。
  • 同じ売上・同じ稼働率でも、誰が手を動かすかで限界利益は変わる。
  • レバレッジは受注後の頑張りでは戻らない。受注前の編成で決まる。

なぜチャージャビリティが高いのに、ファームは儲からないのか

プロフェッショナルファームの利益は、古くから5つのレバーに分解されてきた。レバレッジ、稼働率、単価、実現率、マージンだ。この中で、パートナー一人あたりの利益を最も大きく動かすのはレバレッジである。低マージンでも高レバレッジのファームのほうが、高マージンで低レバレッジのファームより、パートナー一人あたりではむしろ儲かることが多い——これは業界の経済構造として知られている。

レバレッジとは、シニア一人あたり何人分のジュニアの工数を梃子にして案件価値を生んでいるか、である。 パートナーが受注し、マネージャーが設計とレビューを担い、ジュニアが実務を回す。このピラミッドが効いているほど、同じ売上から残る限界利益は厚くなる。

チャージャビリティは、これを一切映さない。稼働率が測るのは、時間が埋まっているかどうかだけだ。その時間を誰が使っているか——高原価のシニアなのか、低原価のジュニアなのか——は、数字の外にある。容れ物の充填率は分かっても、中身は分からない。

同じ稼働率でも、利益は変わる

具体で見る。ある案件を、二つの編成で受けるとする。請求額は同じだ。

編成A。指名されたマネージャーが、自分で手を動かして仕上げる。スピードは速く、品質も高い。だが、案件に張り付くのは高原価の人材一人だ。

編成B。同じマネージャーは要件整理・設計・レビューに回り、実務はジュニア3人が担う。マネージャーの工数は数分の一に減り、案件の大半は低原価のジュニアが回す。

売上が同じで、原価が違う。限界利益は、編成Bが厚い。マネージャーの腕は同じでも、梃子をかけたかどうかで、案件に残る利益が変わる。 これがレバレッジだ。

見る指標チャージャビリティ(稼働率)レバレッジ
測るもの時間が埋まっているか誰の工数で価値を作ったか
高いとき分かること遊休が少ない高単価人材を梃子にできている
見落とすもの誰が手を動かしているか単独では稼働の遊休
利益との関係弱い(埋まっても薄利はある)強い(同じ売上で限界利益が動く)

稼働率そのものの錯覚は埋めるほど利益は逃げる。「稼働率100%」という錯覚に書いた。コンサルではこの上に、レバレッジという固有のレバーが乗る。

レバレッジが崩れる瞬間

レバレッジは、放っておくと崩れる方向に働く。崩す力は、現場の善意から生まれる。

クライアントが「前回のあの人を」と指名する。社内でも「これは任せられる人に」と判断が働く。難所ほどシニアに集まる。育成枠のジュニアは初期に手戻りを出すから、忙しい現場では「自分でやったほうが早い」になる。こうして、本来ジュニアに渡せる工数まで、シニアが抱える。

ジュニアが育たない、あるいは抜けて補充できないと、この傾きは加速する。シニアしか回せない案件が増え、ピラミッドは上が重くなる。稼働率は高いまま、中身は高原価人材の安い作業で埋まっていく。 レポートは緑のままだ。崩れたレバレッジは、どの指標にも赤で表示されない。

指名と採算を分けて意思決定する話、育成枠を案件採算と切り分ける話は制作・コンサル会社で案件利益率を下げる配置ミス4類型で類型化した。

レバレッジは、受注前に決まる

崩れたレバレッジは、受注後に取り戻せない。案件が走り出してからシニアを抜こうとしても、引き継ぎコストとクライアントの抵抗で動かせない。レバレッジが決まるのは、どのグレードを何割で組んで受けるかを決める——受注前の一瞬だ。

採算設計とは、受注前にこの編成と限界利益を設計する行為である。どの案件を、誰のグレードで、どの比率で組むか。シニアを抑えてジュニアを厚くしたら限界利益はいくら増えるか。逆にこの案件は難所が多く、ジュニアでは回らないから薄いレバレッジで受けるしかない——その判断を、走り出す前に下す。手法としてはアサインメントデザイン™と呼ぶ。

CATCAREERアサインメント は、この受注前の編成設計に立つ。案件ごとに、グレードミックスを動かすと限界利益がどう変わるかをその場で見せる。稼働率を埋める道具ではない。誰の工数で価値を作るか——レバレッジを設計する道具だ。

実現率というもう一つのレバーが、請求の手前で利益を削る話はコンサルの採算は、請求書を出す前に削られているに続く。

シニアが手を動かすのは、多くの場合いちばん確実で、いちばん速い。だが、その確実さの分だけ、ファームの利益は薄くなっている。速さと引き換えに何を手放しているかは、受注前の編成図にしか映らない。

FAQ

コンサルの利益はチャージャビリティ(稼働率)で決まるのですか?

決まりません。チャージャビリティは時間が埋まっているかを測るだけで、誰の工数で価値を作ったかを映しません。コンサルの限界利益を決めるのはレバレッジ、つまりシニアの高単価でジュニアの工数をどれだけ梃子にしたかです。稼働率が同じでも、シニアが手を動かすか、設計とレビューに回ってジュニアに実務を渡すかで、案件に残る限界利益は変わります。

コンサルのレバレッジとは何ですか?

レバレッジとは、シニア一人あたり何人分のジュニアの工数を梃子にして案件価値を生んでいるかを表す、ファームの利益構造の中心指標です。パートナーが受注し、マネージャーが設計とレビューを担い、ジュニアが実務を回す——このピラミッドが効いているほど、同じ売上から残る限界利益が厚くなります。

稼働率が高いのに案件の利益が薄いのはなぜですか?

シニアがデリバリーに降りているからです。ジュニアが育たない、または抜けてシニアしか回せない状態になると、高原価の人材が長時間その案件に張り付きます。稼働率は100%でも、高い人件費が限界利益を食い、レバレッジが効いた案件より利益が薄くなります。

コンサルのレバレッジは何で決まりますか?

受注前の編成設計で決まります。どの案件を、どのグレードの人員を何割で組んで受けるか——このグレードミックスを受注前に決めた時点で、その案件のレバレッジと限界利益はほぼ確定します。受注後にシニアが頑張っても、崩れたレバレッジは戻りません。

チャージャビリティとレバレッジは、どちらを見るべきですか?

利益の意思決定にはレバレッジを主に見るべきです。チャージャビリティは遊休の有無を測る運用指標で、埋まっていても薄利な時間を緑色に塗ります。レバレッジは同じ売上から残る限界利益の差を映すため、案件を受けるか・誰で組むかという採算の判断に直結します。

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