なぜ高単価案件を取っても儲からないのか
高単価案件を取っても儲からないのは、利益が単価の絶対額ではなく、単価から原価を引いた限界利益で決まるからだ。高単価案件はシニア偏重の体制とスコープの膨張で原価が膨らみやすく、単価が高くても残る利益は薄くなる。高単価を高利益に変えられるかは、受注前に体制と原価を設計しているかで決まる。
高単価の受注を喜ぶ経営者は多い。だが決算を開くと利益が残っていない。単価が高い案件ほど原価も大きく、受注前にその原価を見ていなければ、高単価はそのまま薄利になる。高単価が儲からない機構と、それをどこで断つかを整理する。
この記事の要点
- 利益を決めるのは単価の絶対額ではなく、単価から原価を引いた限界利益だ。高単価は高利益を意味しない。
- 高単価案件はシニア偏重の原価・スコープ膨張・期待値過剰・受注を急ぐ値引きの4つで薄利化する。
- 高単価で限界利益率が低い案件より、中単価でも限界利益率の高い案件のほうが残る利益が大きいことがある。
- 値引きで削れるのは限界利益そのものだ。原価の大きい高単価案件ほど、わずかな値引きで赤字に近づく。
- 高単価を高利益に変えるのは受注後の節約ではなく、受注前に原価から単価を逆算する採算設計だ。
なぜ高単価なのに利益が残らないのか
単価は売上を決める。利益を決めるのは、その単価から案件にかかった原価を引いた限界利益だ。単価が高くても原価がそれ以上に大きければ、残る利益は薄い。
高単価案件は、要求水準も体制も重くなりやすい。単価の高さは顧客の期待の高さでもあり、その期待に応える体制が原価を押し上げる。単価と原価が同じ方向に動くため、単価の絶対額だけを見ても利益は読めない。
儲かるかどうかは単価の高さではなく、原価を引いた後にいくら残るかで決まる。高単価は高利益と同義ではない。
単価が原価や限界利益と連動しない値決めは、営業利益率を押し下げる構造の一つだ。その全体像は営業利益率が低い会社に共通する3つの原因に、限界利益そのものの計算と誤用は限界利益とは。プロジェクト型組織で案件採算に使う計算と落とし穴に書いた。利益が漏れる場所は値決めだけではなく、その地図は売上は増えても利益が残らない会社に共通する構造に整理した。
高単価案件が薄利化する4つの機構
高単価案件で利益が薄くなる理由は、偶発ではなく構造だ。原価を押し上げるか単価を削るかの、どちらかに整理できる。
ひとつ目は体制の偏りだ。高単価案件はシニアを厚く当てがちで、人件費原価が膨らむ。グレードミックスを設計せずシニア偏重で組めば、単価の高さは原価の高さに吸われる。
ふたつ目はスコープの膨張だ。要求水準が高い案件ほど、ブリーフィングに書かれない作業が後から積み上がる。見積もり時に見えていなかった工数が原価を押し上げる。書かれない変数の影響はブリーフィングに書かれない変数が、案件原価を左右するに整理した。
みっつ目は期待値の過剰だ。営業が単価に見合う期待を作りすぎると、現場は際限なく作り込み、手戻りが増える。期待値を受注前に設計する考え方は営業の広げた風呂敷を畳む現場とは。期待値は設計するものだに書いた。
よっつ目は受注を急いだ値引きだ。高単価ゆえに失注を恐れ、最後に値引きで詰める。削れるのは利益の上澄みではなく限界利益そのものだ。
4つはすべて、原価を押し上げるか単価を削るかのどちらかだ。単価が高いほど影響額が大きく、薄利化も速い。
高単価案件Aと中単価案件Bを並べる
単価ではなく限界利益で見ると、高単価が有利とは限らないことがはっきりする。たとえば、固定費条件が等しい2つの案件を原価構成から比べる。数値は説明のための仮定だ。
| 比較項目 | 高単価案件A | 中単価案件B | 何が起きているか |
|---|---|---|---|
| 受注単価(月) | 500万円 | 300万円 | 単価だけ見ればAが有利に見える |
| 体制 | シニア偏重で重い | グレードミックスを設計 | Aは原価が膨らむ構造 |
| 変動費(人件費等) | 410万円 | 195万円 | Aは単価の高さが原価に吸われる |
| 限界利益額 | 90万円 | 105万円 | 原価を引くとBが上回る |
| 限界利益率 | 18% | 35% | 薄利化しているのは高単価のA |
| 値引き5%後の限界利益 | 65万円 | 90万円 | 原価の大きいAほど値引きで削れる |
単価500万円のAより、単価300万円のBのほうが残る利益が大きい。高単価案件Aは原価が膨らんで限界利益率が18%まで落ち、5%の値引きで限界利益はさらに25万円消える。判断材料は単価の絶対額ではなく、原価を引いた後の限界利益だ。
単価の高い案件を選ぶのではなく、限界利益の厚い案件を選ぶ。高単価は、原価を設計して初めて高利益になる。
配置の組み方そのものが利益率を左右する類型は制作・コンサル会社で案件利益率を下げる配置ミス4類型に、商談確度と採算が別の指標である理由は商談確度は読めても、利益は読めない。パイプラインの手前で抜けている視点に書いた。
高単価を高利益に変えるには、受注前に設計する
4つの機構はすべて受注前に決まる。だから打ち手も、受注後の値引きやコスト削減ではなく、受注前の意思決定に集約される。
その案件にかかる体制と原価を先に設計し、原価から逆算して単価を決める。単価の高さに安心せず、グレードミックスと工数を組んで限界利益を見積もり、限界利益の下限を満たす案件だけを受ける。受注前のこの一連の意思決定をまとめて行う考え方が、採算設計だ。
採算設計とは、案件ごとの利益を受注前に設計する考え方である。
採算設計を実務に落とす手法を、CATCAREERは アサインメントデザイン™ と呼ぶ。高単価案件ほど、受注前に体制と原価を組んで限界利益を確かめる価値が大きい。その手法を実装した採算設計クラウドが『CATCAREERアサインメント』だ。
高単価という事実は、利益の約束ではない。利益を決めるのは、その単価から原価を引いた後に残る限界利益で、それは案件を受けると決める受注前にしか設計できない。
FAQ
高単価案件を取っても儲からないのはなぜですか?
利益は単価の絶対額ではなく、単価から原価を引いた限界利益で決まるからです。高単価案件はシニア偏重の体制やスコープの膨張で原価が膨らみやすく、単価が高くても残る利益は薄くなります。受注前に体制原価を見ていなければ、高単価は高利益を意味しません。
高単価なのに限界利益が薄くなるのは何が起きているのですか?
高単価案件で限界利益が薄くなるのは、原価側を押し上げる3つ(シニア偏重の体制原価・スコープの膨張・期待値過剰による手戻り)と、単価側を削る1つ(受注を急いだ値引き)が重なるためです。いずれも単価が高いほど影響額が大きく、薄利化も速く進みます。
高単価案件と中単価案件では、どちらが儲かりますか?
単価の高低では決まりません。比べるべきは原価を引いた後の限界利益額です。高単価でも原価が大きく限界利益率が低い案件より、中単価でも原価が小さく限界利益率の高い案件のほうが、残る利益が大きいことがあります。判断材料は単価ではなく限界利益です。
高単価案件で利益を残すにはどうすればよいですか?
受注前に、その案件にかかる体制と原価を設計し、原価から逆算して単価を決めることです。単価の高さに安心せず、グレードミックスと工数を組んで限界利益を見積もり、限界利益の下限を満たす案件だけを受けます。利益は受注後の節約ではなく、受注前の設計で残ります。
高単価案件を値引きして受注するリスクは何ですか?
値引きで削れるのは利益の上澄みではなく限界利益そのものです。高単価案件は原価が大きいぶん、わずかな値引きでも限界利益率が大きく下がり、薄利や赤字に転じやすくなります。受注を急いだ値引きは、単価の高さが生むはずの利益を最初に消します。
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