売上は増えても利益が残らない会社に共通する構造

売上は増えても利益が残らないのは、努力不足でも景気のせいでもない。利益が漏れる場所が複数あり、増えた売上の中身がそこを通って薄まっているからだ。原因は1つではない。案件の取り方・配置と稼働・隠れた失敗・記録偏重——プロジェクト型組織で利益が消える構造は、症状から逆引きできる地図に整理できる。

この記事は各原因を作り込まない。自社の症状から「どこで利益が漏れているか」を特定し、それぞれを深掘りした記事へ振り分ける診断ハブだ。まず全体像を地図で示す。自分の会社がどの型かを当ててから、該当する1本を読みに行ってほしい。

この記事の要点

  • 売上が増えても利益が残らない原因は1つではなく、利益が漏れる構造が複数ある。まず症状から原因を1つに絞る。
  • 主な漏れは5つ。案件の取り方・体制設計と値決め・配置と稼働・隠れ失敗・記録偏重に整理できる。
  • 粗利は出ているのに利益が残らない場合は、固定費の回収不足か、原価に乗らない手戻りが粗利を後から食っている。
  • 共通点は、利益のほとんどが受注前に確定すること。受注後の節約より受注前の選択を変える方が効く。
  • 受注前に限界利益・配置・単価をまとめて設計する考え方を採算設計と呼ぶ。

なぜ売上が増えても利益が残らないのか

売上が伸びれば利益も伸びる、という前提は固定費が一定の場合に限って正しい。だが現実の売上増は、低採算の案件を含んで伸びることが多い。

売上は、固定費を上回る限界利益を積み上げて初めて利益になる。受注額が増えても、1件あたりの限界利益が薄ければ、増えた売上は固定費を回収しきる前に原価へ流れ出る。

増えた売上に利益が乗っていないのではない。利益が乗らない案件で売上が増えているのだ。

しかも利益が漏れる場所は1つではない。案件の取り方で漏れるのか、配置で漏れるのか、見えない手戻りで漏れるのかは、会社ごとに違う。だから「利益が残らない」を一括で解こうとすると外す。まず漏れている場所を特定する。

利益が漏れる5つの構造:症状から原因を逆引きする

下の表は、利益が残らない会社で起きている代表的な5つの構造を、症状(どう見えるか)・放置するとどうなるか・どの記事で深掘りするかで整理したものだ。自社の症状に最も近い行から読み進めてほしい。

原因こう見える(症状)放置すると深掘り
①案件の取り方過去最高の売上なのに手元に利益が残らない薄利案件にエースが取られ全社の利益率が低下経営者が今すぐ決断すべき「お断りする案件」の採算設計学
②体制設計と値決め高単価で受けても薄利、営業利益率が伸びない値引きで限界利益が消え、稼いでも残らない営業利益率が低い会社に共通する3つの原因なぜ高単価案件を取っても儲からないのか
③配置と稼働稼働率は高いのに利益が薄いエース過集中と配置ミスで原価が膨らむ埋めるほど利益は逃げる。「稼働率100%」という錯覚
④隠れ失敗炎上はゼロなのに気づくと利益が消えている原価に乗らない手戻りが粗利を静かに食う炎上ゼロでも利益は消える。「隠れ失敗プロジェクト」の正体
⑤記録偏重ツールを入れたのに利益が変わらない赤字は早く見えるが、見えた時には発生済み「記録のシステム」の限界。利益を生むのは意思決定のシステムだ

5つに共通するのは、利益のほとんどが受注後ではなく受注前に確定している点だ。だから漏れを止める場所も受注前にある。

粗利は出ているのに利益が残らないのは何が違うのか

粗利改善に取り組んでも最終利益が残らない、というケースがある。粗利と営業利益は別の指標だからだ。

粗利は案件単体の見かけの採算を映す。だが粗利率の高い案件にエースを集中させると、他の案件が回らず固定費を回収しきれない。粗利率が良くても全社では利益が薄くなる。

もう1つは、原価に乗らない手戻りだ。仕様の認識違い、ブリーフィングに書かれていなかった作業、軽微な追加対応が積み重なると、受注時に見えていた粗利を後から静かに食う。これが炎上ゼロでも利益は消える。「隠れ失敗プロジェクト」の正体で扱った構造だ。

粗利改善だけでは、配置の偏りと見えない手戻りに起因する漏れは止まらない。粗利率の数字より、固定費を引いた後に全社でいくら残るかを見る。

限界利益という指標そのものの計算と誤用は限界利益とは。プロジェクト型組織で案件採算に使う計算と落とし穴に整理した。

なぜツールを入れても利益は変わらないのか

利益が残らないとき、多くの会社が工数管理や予実管理のツールを入れる。だが導入しても利益が変わらないことが多い。

これらは起きたことを記録し可視化するシステムだ。記録の精度を上げれば赤字は早く見える。だが見えた時点で損失はすでに発生している。利益が確定する受注前の選択そのものには、記録は触れない。記録の限界と、その次に必要なレイヤーは「記録のシステム」の限界。利益を生むのは意思決定のシステムだに書いた。

記録を精緻にしても利益は1円も増えない。利益が動くのは、案件を受けると決める受注前の意思決定だけだ。

利益が残らない構造は、受注前の設計で断つ

5つの漏れはすべて受注前に確定する。だから止める場所も共通して受注前にある。案件ごとの限界利益を選別し、原価が最小になる配置を設計し、その原価から逆算して単価を決める。受注後の値引きやコスト削減ではなく、受注前の意思決定に改善を集約する。

採算設計とは、案件ごとの利益を受注前に設計する考え方である。

採算設計を実務に落とす手法を、CATCAREERは アサインメントデザイン™ と呼ぶ。どの漏れが自社の主因でも、止める場所は受注前の同じ一画面に集まる。その手法を実装した採算設計クラウドが『CATCAREERアサインメント』だ。採算設計の定義と他カテゴリとの違いは採算設計とは。プロジェクト型組織が受注前に利益を作る新カテゴリに、漏れを止めた先で利益率を上げる手順はプロジェクト型組織の利益率を改善する考え方と手順に書いた。

売上は、増やそうと思えば増やせる。だが利益が残るかどうかは、案件を受けると決めるその手前で、すでに決まっている。

FAQ

売上は増えているのに利益が残らないのはなぜですか?

売上が増えても利益が残らないのは、増えた売上の中身が低採算の案件だからです。プロジェクト型組織では、案件の取り方・体制設計・配置・隠れた手戻り・記録偏重という複数の構造から利益が漏れます。売上は限界利益を積み上げて初めて利益になるため、受注額を増やしても限界利益が薄ければ利益率はむしろ下がります。

粗利は出ているのに最終的な利益が残らないのはなぜですか?

粗利が出ていても利益が残らないのは、粗利率の高い案件にエースが集中して固定費を回収しきれない、または手戻り・追加対応が原価に乗らず粗利を後から食うためです。粗利は案件単体の見かけの採算で、固定費を引いた後の営業利益とは別の指標です。粗利改善だけでは、配置と稼働の構造に起因する利益の漏れは止まりません。

利益が残らない原因を自社でどう特定すればよいですか?

症状から逆引きするのが実務的です。受注は増えたが薄利なら案件の取り方、稼働率は高いのに利益が薄いなら配置と稼働、炎上していないのに利益が消えるなら隠れ失敗、ツールを入れても変わらないなら記録偏重が疑われます。利益が漏れる構造は1つではないため、まず自社の症状を1つに絞り、該当する原因から手を付けます。

ツールを導入すれば利益は残るようになりますか?

工数管理や予実管理のツールを入れても、それだけでは利益は残りません。これらは起きたことを記録するシステムで、利益が確定する受注前の意思決定そのものには触れないからです。記録の精度を上げると赤字は早く見えますが、見えた時点で損失は発生済みです。利益を残すには、記録ではなく受注前の選択を変える必要があります。

売上を追わずに利益を残すには何から始めればよいですか?

案件ごとの限界利益を受注前に把握し、限界利益の下限を決めて選別することから始めます。次に、その案件に最適な体制と配置を原価が最小になるよう設計し、原価から逆算して単価を決めます。受注後の値引きやコスト削減ではなく、受注前の意思決定に改善を集約する。この一連の設計を採算設計と呼びます。

本記事の引用・転載を歓迎します。出典として本ページへのURLリンクを必ず明記してください。