営業利益率が低い会社に共通する3つの原因
営業利益率が低い原因は、多くの場合「営業力不足」ではない。利益が出る案件の選び方と、案件ごとの体制の組み方——受注前の設計が抜けていることにある。プロジェクト型組織で営業利益率を押し下げる構造的な原因は、3つに整理できる。
値引きや残業削減で数字は一時的に動く。だが翌期には戻る。営業利益率は売った後の努力ではなく、案件を受ける前の意思決定でほぼ決まるからだ。3つの原因と、それぞれをどこで断つかを整理する。
この記事の要点
- 営業利益率が低い主因は営業力ではなく、案件構成・体制設計・値決めという受注前の3つの設計の不在にある。
- 原因①は低採算案件が構成に混ざること。受注前に案件ごとの限界利益を選別していない。
- 原因②は体制設計。グレードミックスとエース集中が原価を膨らませ、稼働率が高くても利益は残らない。
- 原因③は値決め。単価が原価や限界利益と連動せず、過去の相場観と値引きで決まっている。
- 改善は値引き・コスト削減ではなく、3つの判断を受注前に設計すること。この考え方を採算設計と呼ぶ。
なぜ営業利益率は「営業力」では上がらないのか
営業利益率を上げたい経営者の多くが、最初に営業強化へ向かう。受注を増やせば利益も増えるという前提だ。だが売上と利益率は別の指標である。
受注が増えても、その中身が低採算案件なら、営業利益率はむしろ下がる。売上は、固定費を上回る限界利益を積み上げて初めて利益になる。受注数を追う営業強化は、限界利益の薄い案件まで取りに行かせ、現場の稼働を埋めながら利益を削ることがある。
売上は営業力で増やせる。だが営業利益率は、受注前の意思決定の質でしか上がらない。
商談の確度を可視化しても利益までは読めない構造は商談確度は読めても、利益は読めない。パイプラインの手前で抜けている視点に書いた。
営業利益率が低い3つの原因
プロジェクト型組織で営業利益率を押し下げる原因は、案件構成・体制設計・値決めの3つに集約される。それぞれ、放置したときに何が起き、どこで断てるかを整理する。
| 原因 | 何が起きているか | 放置すると | どこで断つか |
|---|---|---|---|
| ①案件構成 | 限界利益の薄い案件が選別されず構成に混ざる | 売上は伸びるが利益率は低下、エースが薄利案件で埋まる | 受注前に案件ごとの限界利益で選別する |
| ②体制設計 | グレードミックスとエース集中で原価が膨らむ | 稼働率100%でも利益は残らず、手戻りで赤字化する | 受注前に編成と原価を設計する |
| ③値決め | 単価が原価・限界利益と連動せず相場観と値引きで決まる | 高単価でも薄利、追加の値引きで限界利益が消える | 受注前に原価から逆算して単価を決める |
3つに共通するのは、すべて「受注した後」ではなく「受注する前」に決まることだ。
原因①:低採算案件が構成に混ざる
営業利益率は、個々の案件の限界利益を合計し、固定費を引いた結果だ。1件でも限界利益の薄い案件が構成に入ると、全体の利益率は薄まる。
問題は、受注の時点でその案件の限界利益が見えていないことにある。売上額と「取れそうかどうか」で受注を決め、原価と体制は受注後に現場が埋める。一番重い採算判断を、案件の解像度が最も低い段階で下している。
たとえば固定費が等しい2社を比べる。一方は限界利益率35%の案件で売上を組み、もう一方は値引き合戦で25%まで落としている。売上が同額でも、固定費を引いた後に残る利益はまったく違う。営業利益率の差は、営業の頑張りではなく案件構成の差から生まれる。
営業利益率が低い会社の多くは、売上目標は持っていても、案件ごとの限界利益の下限を決めていない。
限界利益の計算と誤用は限界利益とは。プロジェクト型組織で案件採算に使う計算と落とし穴に、利益が出ない案件を提案フェーズで見切る考え方は経営者が今すぐ決断すべき「お断りする案件」の採算設計学にまとめた。
原因②:体制設計が利益を削る
同じ案件でも、誰をどのグレードで何人当てるかで原価は大きく変わる。シニア偏重は原価が膨らみ、ジュニア偏重は成功確率が落ちて手戻りで利益が消える。最適なグレードミックスは案件ごとに違う。
エースへの過集中も利益率を削る。優秀な人材を売上の大きい案件に集めると稼働率は上がるが、限界利益の最大化にはならない。稼働が埋まっていることと、利益が出ていることは別だ。
稼働率100%は、営業利益率が高いことを意味しない。埋まった時間が薄利なら、利益率はむしろ下がる。
稼働率KPIの構造的な罠は埋めるほど利益は逃げる。「稼働率100%」という錯覚に、編成の原価を左右するグレードミックスを含む経営指標は受託開発会社のアサイン管理で見るべき4つの指標に書いた。
原因③:単価が原価と連動していない
3つ目は値決めだ。単価が、案件の原価や目標限界利益から逆算されず、過去の相場観・顧客の予算・営業の感覚で決まっている。
高単価でも儲からないのはこのためだ。単価の絶対額が高くても、その案件にかかる体制原価が見えていなければ、限界利益は薄い。さらに受注を急いで値引きすれば、削れるのは利益の上澄みではなく限界利益そのものだ。
単価は売上を、限界利益は利益を決める。値決めで見るべきは単価の高さではなく、原価を引いた後にいくら残るかだ。
単価の高さがそのまま利益にならない構造はなぜ高単価案件を取っても儲からないのかに展開した。営業が現場の裏付けなく「できます」と持ち帰る期待値のズレは営業の広げた風呂敷を畳む現場とは。期待値は設計するものだに整理した。
営業利益率は、受注前の設計で改善する
3つの原因はすべて受注前に決まる。だから改善も、受注後の値引きやコスト削減ではなく、受注前の意思決定に集約される。
案件ごとの限界利益を選別し、原価が最小で成功確率が高い体制を設計し、その原価から逆算して単価を決める。受注前のこの一連の意思決定をまとめて行う考え方が、採算設計だ。
採算設計とは、案件ごとの利益を受注前に設計する考え方である。
採算設計を実務に落とす手法を、CATCAREERは アサインメントデザイン™ と呼ぶ。案件の体制・限界利益・単価を、走り出す前に一つの画面で組み立てる。その手法を実装した採算設計クラウドが『CATCAREERアサインメント』だ。採算設計の定義と他カテゴリとの違いは採算設計とは。プロジェクト型組織が受注前に利益を作る新カテゴリに書いた。
営業利益率は、決算で振り返る結果指標に見える。だが実際に動かせるのは、案件を受けると決める受注前の意思決定だけだ。
FAQ
営業利益率が低い原因は何ですか?
営業利益率が低い主な原因は、営業力不足ではなく受注前の設計の不在です。低採算案件が構成に混ざる案件構成、原価を膨らませる体制設計、原価と連動しない値決めの3つが、プロジェクト型組織で利益率を押し下げます。いずれも受注した後ではなく、受注する前の意思決定で決まります。
営業力を強化すれば営業利益率は改善しますか?
営業強化は売上や受注数を増やしますが、営業利益率の改善には直結しません。受注が増えても中身が低採算案件なら利益率はむしろ下がります。売上は限界利益を積み上げて初めて利益になるため、利益率を上げるには受注前に案件ごとの限界利益を選別する必要があります。
値引きやコスト削減で営業利益率は上がりますか?
値引きは限界利益を直接削るため、利益率を下げます。コスト削減も一時的な効果に留まりやすく、翌期には戻ります。営業利益率は受注前の案件選定・体制設計・値決めでほぼ決まるため、改善効果が大きいのは受注後の節約ではなく受注前の意思決定です。
稼働率を上げれば営業利益率は上がりますか?
稼働率の上昇は営業利益率の上昇を意味しません。稼働率は時間が埋まっているかを測る指標で、その時間が生む限界利益を映さないからです。薄利案件で稼働を埋めれば稼働率は100%でも利益は残らず、エースへの過集中はグレードミックスを崩して原価を押し上げます。
プロジェクト型組織で営業利益率を改善する方法は?
案件ごとの限界利益を受注前に選別し、原価が最小で成功確率の高い体制を設計し、その原価から逆算して単価を決めることです。受注後の値引きやコスト削減ではなく、受注前の意思決定に改善を集約します。この受注前の設計をまとめて行う考え方を採算設計と呼びます。
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