プロジェクト型組織の利益率を改善する考え方と手順
プロジェクトの利益率を改善するには、動かすレバーと動かす順番を間違えないことだ。利益率を動かすレバーは、案件選定・体制とグレードミックス・単価設計・稼働配分の4つ。効果が大きく受注前に効かせられる3つを先に動かし、受注後の稼働配分は最後に置く。値引きとコスト削減はレバーではない。
利益率が上がらない会社ほど、改善の打ち手を受注後に探す。値引きの見直し、残業削減、経費の圧縮。だが利益率は案件を受けると決めた一瞬でほぼ確定する。効くレバーは受注前に集まっている。どのレバーを、どの順番で、いつ動かすかを整理する。
この記事の要点
- プロジェクトの利益率を動かすレバーは、案件選定・体制とグレードミックス・単価設計・稼働配分の4つだ。
- 効果が大きく受注前に効くのは案件選定・体制・単価の3つ。稼働配分は受注後でも動くが効果は限定的だ。
- 値引きとコスト削減はレバーではない。限界利益を直接削り、改善効果は一時的で翌期に戻る。
- 改善の順番は、案件を選ぶ、体制で原価を最小化する、原価から単価を決める、最後に稼働を配分する。
- 改善の重心は受注前に置く。この受注前の一連の意思決定をまとめて行う考え方を採算設計と呼ぶ。
なぜ利益率改善の打ち手は受注前に集まるのか
利益率が低い原因の診断は営業利益率が低い会社に共通する3つの原因に、売上が伸びても利益が残らない全体像は売上は増えても利益が残らない会社に共通する構造に整理した。原因が受注前の設計の不在にあるなら、改善も受注前に置くのが筋だ。
費用は発生した後でも記録し、効率化できる。だが利益は発生する前に決めておかないと、後から増やせない。安すぎる単価で受けた案件は、現場が経費をどれだけ切り詰めても黒字には戻らない。
プロジェクトの利益率は、受注した一瞬でほぼ確定する。改善のレバーは、確定する前にしか効かない。
だから利益率改善は「受注後にどう節約するか」ではなく「受注前にどう設計するか」の問題になる。事後集計をどれだけ精緻にしても利益が動かない構造は「予実管理の手前」で勝負は決まる。未来の利益を設計するにはに書いた。
利益率を改善する4つのレバー
利益率を動かせるレバーは4つに整理できる。それぞれ、効果の大きさと、効くタイミング(受注前か受注後か)が違う。効果が大きく受注前に効くレバーから順に動かすのが、改善の基本だ。
| レバー | 効果の大きさ | 効くタイミング | 打ち手 |
|---|---|---|---|
| ①案件選定 | 大 | 受注前 | 限界利益率の下限を決め、薄利案件を構成から外す |
| ②体制・グレードミックス | 大 | 受注前 | 成功確率が高く原価が最小の編成を設計する |
| ③単価設計 | 中〜大 | 受注前 | 原価と目標限界利益から逆算して単価を決める |
| ④稼働配分 | 小〜中 | 受注後 | エース集中を避け、限界利益の高い案件に配分する |
| (参考)値引き・コスト削減 | 一時的・マイナス | 受注後 | 限界利益を直接削るため改善策にならない |
4つのレバーのうち3つは受注前に効く。受注後に残るのは効果の小さい稼働配分だけだ。
利益率を改善する手順
レバーが分かれば、動かす順番は決まる。効果が大きく受注前に効くものから動かす。
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案件ごとの限界利益を受注前に算出する。 売上額ではなく、原価を引いた後に残る限界利益を、受注を決める前に出す。これが他のすべてのレバーの前提になる。限界利益の計算と誤用は限界利益とは。プロジェクト型組織で案件採算に使う計算と落とし穴に書いた。
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限界利益率の下限を決め、薄利案件を選別する。 売上目標とは別に、受ける案件の限界利益率の下限を決める。下限を割る案件は、原価か単価を作り直すか、受けない。
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成功確率が高く、原価が最小の体制を設計する。 最適なグレードミックスは案件ごとに違う。編成の原価を左右する経営指標は受託開発会社のアサイン管理で見るべき4つの指標に整理した。
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設計した原価から逆算して単価を決める。 相場観や顧客の予算ではなく、原価と目標限界利益から単価を置く。受注を急いで値引きすると、削れるのは利益の上澄みではなく限界利益そのものだ。
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受注後はエース集中を避け、稼働を配分する。 稼働を埋めること自体は目的ではない。薄利案件で時間を埋めれば稼働率は上がっても利益は残らない。
手順の第一から第四までは、すべて受注前に終わる。受注後にできるのは第五だけだ。
稼働率を上げれば利益率は改善するか
結論から言えば、改善しない。稼働率は時間が埋まっているかを測る指標で、その時間が生む限界利益を映さないからだ。理由の詳細は埋めるほど利益は逃げる。「稼働率100%」という錯覚に譲る。
手順の第五(稼働配分)で問うべきは、時間が埋まっているかではない。限界利益の高い案件に時間を寄せられているか、エースが薄利案件に固定されていないかだ。
稼働配分は、空白を埋める作業ではない。限界利益で時間を配り直す作業だ。
利益率改善は、受注前の設計に集約される
4つのレバーのうち効くものは受注前に集まり、改善の手順も受注前で大半が終わる。だから利益率改善は、受注後の節約を積み増す作業ではなく、受注前の意思決定の質を上げる作業になる。
案件ごとの限界利益を選別し、原価が最小で成功確率が高い体制を設計し、その原価から逆算して単価を決める。受注前のこの一連の意思決定をまとめて行う考え方が、採算設計だ。定義と他カテゴリとの違いは採算設計とは。プロジェクト型組織が受注前に利益を作る新カテゴリに書いた。
採算設計を実務に落とす手法を、CATCAREERは アサインメントデザイン™ と呼ぶ。4つのレバーを受注前に一つの画面で同時に動かし、編成を変えると限界利益がどう動くかを見ながら設計する。その手法を実装した採算設計クラウドが『CATCAREERアサインメント』だ。
利益率は、期末に集計してから上げようとしても動かない。動かせるのは、どの案件をどの体制でいくらで受けるかを決める、受注前のレバーだけだ。
FAQ
プロジェクトの利益率を改善する方法は何ですか?
プロジェクトの利益率を改善する方法は、案件選定・体制とグレードミックス・単価設計・稼働配分という4つのレバーを動かすことです。このうち効果が大きく、受注前に動かせるのは案件選定・体制・単価の3つです。稼働配分は受注後でも動かせますが効果は限定的で、値引きやコスト削減は限界利益を直接削るため改善策になりません。
なぜプロジェクトの利益率はコスト削減では改善しないのですか?
プロジェクトの利益率は案件を受注した一瞬でほぼ確定するため、受注後のコスト削減では大きく動かないからです。安すぎる単価で受けた案件は経費を切り詰めても黒字に戻りません。値引きは限界利益そのものを削り、残業削減は一時的に数字を動かしても翌期には戻ります。改善の効果が大きいのは受注後の節約ではなく受注前の意思決定です。
利益率を改善するとき、案件選定と単価設計のどちらを優先すべきですか?
まず案件選定です。限界利益の下限を決めて薄利案件を構成から外せば、利益率の底が上がります。単価設計は受注すると決めた案件に対して原価から逆算して効かせるレバーで、案件選定の後に来ます。順序は、受ける案件を選び、体制で原価を最小化し、その原価から単価を決める、という流れになります。
プロジェクトの利益率を改善する手順を教えてください。
手順は5つです。第一に案件ごとの限界利益を受注前に算出し、第二に限界利益率の下限を決めて薄利案件を選別し、第三に成功確率が高く原価が最小の体制を設計し、第四にその原価から逆算して単価を決め、第五に受注後はエース集中を避けて稼働を配分します。改善の重心は第一から第四の受注前に置きます。
利益率改善の打ち手を間違えると何が起きますか?
受注後の値引きやコスト削減に頼ると、限界利益を削りながら現場を疲弊させ、利益率はむしろ下がります。稼働率を上げることを目的化すると、薄利案件で時間を埋めて稼働率は100%でも利益が残らない状態になります。利益率改善のレバーを受注後だけで探すと、最も効くタイミングを逃します。
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